アップル宇宙連合軍地球監視日誌

1/1
前へ
/1ページ
次へ
   プロローグ     「119番宇宙」の中の天の川銀河。中心には巨大なブラックホールが存在し2千億個もの恒星が瞬いている。 その中にあって地球人類は24世紀に入っても各地で戦争をしていてその歴史に片時も「平和な時代」はない。  実は、地球という星は、その昔我々シュラン星人の流刑星だったのだ。6万年前我々の住む「16番宇宙」から別の宇宙へ飛行する技術が開発され、宇宙旅行が流行ったのだった。 一方、重罪人をシュラン星内の孤島に留置所を設けて収監していたが、脱獄するものが絶えなかった。科学技術が進歩し、留置所を破壊し宇宙船で逃げてしまうのだ。  それで、議会が地球星を流刑星とし監視船を常駐させ、手の平サイズの監視機を数千台展開して脱走を抑止しすることになったのだ。 後々、その犯罪者達はホモサピエンスと呼ばれるようになった。    アップル宇宙連合軍の地球監視船の艦長イプシロンは着任して3年になる。  着任後、気がかりなのは、星間分子雲が地球に向かって飛び続けて地球到達まで1年を切ったことだった。 我々ならブラックホールをコントロールして星間分子雲のコースを変えることも出来るのだが……           第1話 発見       北海道にある天文学研究所の高桑眞智所長は、西暦2382年5月天の川銀河の中心にあるバルジ内の小さなブラックホールから、亜光速で噴き出したジェットに吹き飛ばされてきた星間分子雲が地球に接近してくることを発見した。 一週間後、高桑が政府の諮問機関である日本学術会議のメンバーで総理や科学技術大臣とも親交がある浦川順平宇宙物理学博士にその報告書を手渡し説明する。 浦川博士は独自の調査で11か月後の西暦2383年4月に地球に到達することを確認した。 博士は学術会議メンバーに伝えるのと同時に安平科学技術大臣と愛別総理に伝えた。 その情報はあっという間に世界中の天文学者にも伝えられ、検証が行われ事実と認定された。    総理から浦川博士は被害の程度を示すよう言われた。物理学会が都内の国立科学研究所の会議室で開催され高桑が発表した。会議では世界の天文学や気象学等の第一人者が協議しその結果を纏めた。 『地球と太陽が分子雲に包まれるため、日光が遮断され地球が氷期に入る。 多くの水が凍り海面は30メートル程度降下し船舶は航行できなくなる。 55度より高緯度の地域は摂氏ー90℃を下回るため人類は生息できなくなる。 航空機の飛行は分子雲に含まれているガラス質のダストによりエンジントラブルを起す可能性が高く危険である。 直径数十キロ以下の大きさで超低温のダウンバーストが多発するため、地上の建造物や生物に多大な被害を与える。 分子雲が強力な磁場を持ち、S極同士が接近するためその反発力で地球が南北に振動することになり数十メートルの津波が発生する』   その星間分子雲は太陽よりも質量があり接触を回避することは不可能なので、各国はこの報告を参考として対応策を検討することになる。    西暦2383年4月10日、星間分子雲が地球に接触した。  西暦2383年5月10日、星間分子雲が色濃くなり太陽もその輝きを失いつつある。  テレビでは世界のほとんどの国で最低気温を更新していた。極地域では、マイナス80℃を超えた。             第2話 天災     西暦2383年5月12日、アメリカのロス空港、モリー一家三人はハワイ旅行へ行く計画だ。娘のジェーン7歳は嬉しくてはしゃいで前の晩からほとんど寝ていない。  一家は、ハワイ航空の135便9時35分発に乗った。ジェーンは初めての飛行機で嬉しくて窓に被りついて外をみている。約6時間でホノルルだ。 海は青いがキラキラしない。空は、何か茶色っぽい。 「まま! 今日は、晴れてるの? 曇ってるの? 雲ないのに青くないよ~」  後一時間でホノルルに到着すると機内アナウンスが流れる。現地の天気は晴れ。波もなく楽しんで、と言う。    それから少しして、いきなり機体がガタガタと細かく振動する。アナウンスは何もない。  窓外がまっ茶色に染まって景色が消えた。  突然エンジン音が段階的に弱くなり、消えていった。そして急降下が始まった。 少しして、機体が安定する。 「ただ今、エンジン故障のため降下しましたが、あと、30分ほどでホノルル到着予定です。シートベルトをお締め下さい」 アナウンスは流れたが海面がどんどん近づいてくる。すこし間があって、力強いエンジン音が聞こえてきた。 「ダストの影響で、止まっていた4機のエンジンのうち1機が復活しました。このあと、高度を維持して空港に入ります」とアナウンスされる。 「え~っ、何! それ~! あなたあ~大丈夫なの?」乗客が叫んでいる。 「わからん! 俺たちは神に祈ろう!」 「海に手が届きそうだ……」 「きゃ~! 落ちる~! 神様あ~!」女性客達が騒ぎ出す。 「頼む! 無事着いてくれっ!」男性客が叫ぶ。 「本機は緊急着陸します! 防御姿勢をとってくださいっ!」いきなり、緊急事態を宣言するアナウンスが流れた。 乗客の悲鳴が続く。 突然、強烈な衝撃と大きな爆発音がする。海面に機体が叩きつけられたのだ。 轟音とともに機体が二つに引き裂かれ、再び爆発し機体が炎に包まれる。半回転して機体は猛火に包まれながら砂浜に背中から落ちた。    西暦2383年5月13日、ロシアの最北の漁港ディクソン。人口は450人程に減っている。この季節になってようやく太陽が地平線の上にその丸い姿を表す極寒の町だ。寒さには慣れている住人、朝9時、仕事や学校へ行きかう人がいる。キリル・スミルノフ25歳もその一人、近所のポリーナ・ミドロフ55歳がやっている魚屋で働いてる。 「おはようございます。今日は、一段と寒いですねエ~」 「おはよっ。今日も、頼むよ。あんたしかいないんだからね~ははっ」いつも元気一杯のおばさんだ。 キリルは裏の魚置き場から、店に魚を並べる作業をしていた。  雑談をしていると歩くのが難しいくらい強い風が出てきた、さらに気温が急激に下がる。  通りを人が咳込みながら歩いている。急に咽るように咳をし、ガ~ッと血を吐く。そして倒れる。見ていたキリルは「どうしたっ!」と叫びながらガラスのドアを開けて外へ飛び出す。そして倒れた人を抱き起こそうとして、咽るように咳をし、ガ~ッと血を吐く。そして倒れる。 おばさんも、また外へ飛び出し、そして同じように血を吐いて倒れた。 町中の人が同じように死んでいった。   西暦2383年5月15日、朝のニュースでは、キャスターが現在の地球の気候について解説している。 「……。大都市におられるかたは、自分があと最低2年生き延びるにはどうしたら良いのか考えて下さい。粗食に耐えて生き延びれるかもしれませんし、飢え死にするかも知れません。私にはそれしか言えません……」  世界中で同様の報道があり、特に大都市の住民はパニックを起こした。先ず、買い占めが起きて、食料品を始め、暖房用品などあらゆるものが奪い取るように買われて行った。暴動も起きているし、他家を襲い食料品を奪い、殺し合いも起きている。  低緯度地域にある農家がトラックの武装集団に襲われ、畑のモノをすべて奪われた。     西暦2383年5月25日、テレビで緊急速報のテロップが流れる。世界の各地で津波が発生し被害がでているとのことである。日本沿岸に津波警報が発出された。 「え~会見を始めます。日本の沿岸地域に津波警報を発出しました。想定の高さは30メートルとしておりますが、それ以上、少しでも高い地域への非難をお願いします。既に、アメリカのニューヨークには30メートルを超える波が氷山と共に襲来しました……」    それから数時間後、平取に疎開していた高桑がふと海を見ると、黒っぽい筋が水平線の端から端まで横たわっているのが見えた。  遠くにサイレンが聞こえてきた。拡声器で何かを喋っているのが聞こえる。言葉は聞き取れないが、恐らく避難命令だろう。 「どうしたの?」と呑気な典子。 「津波だ! 苫小牧近辺が津波に襲われる。海を見たら黒い帯が来るんだ」 「えっどうしよう……苫小牧には友達も沢山いる!」 「なら、電話しろっ! すぐ、逃げろって」 典子は電話をかけようとするが相手がでない。「でないなあ……」    テレビの中継で何処かの町が津波にやられてる。 「速報ですっ! 日本の太平洋岸の都市のすべてが津波に襲われています。中継は東京の放送局のライブカメラの映像です……」 ビルが海にそびえ立っている。見渡す限り海だ、高速道路が海面に潜り込んでいる。車が多数浮いている。人も流されている。遠くに火の手が見える。ビルに車が刺さっている。電車が高架から落ちかけている。 「……東京も横浜も名古屋も大阪も九州も北海道でも……そして、苫小牧も釧路、函館も30メートルの波が押し寄せたようです……」   西暦2383年12月、他国の情報が殆ど入らなくなってしまった。  次々に起きる災害に、人々は絶望し人類滅亡の危機感をニュースは伝えている。70億人余りだった世界人口は、既に5分の一以下の11億人余りと推測された。  暖房の重要なカギを握る原油は価格が高騰。軍事力を持って生産基地を奪おうとする国が現れ、産油国が基地を爆破して原油の生産が停止、世界中への供給が止まった。 その結果、家庭で石油の在庫がなくなり、家や車の中などで凍死するひとが溢れ、遺体もそのまま放置される状態となった。    ある日のラジオで日本の取材チームの報告として、厳しい環境で生き残る先住民族について報道していた。 ――先住民族と言われる人々は5大陸の90か国以上の国々に3億7千万人ほどが住んでいる。  日本のアイヌをはじめ、中南米のオートクトン、カナダのイヌイット、アメリカのインディアン、北極圏のエスキモーなど多くの先住民族は、文明の力を使わずして生き抜く術を知っていて、彼らに助けられて生き延びた後住民族は数えきれない。 ―― そう伝えていた。    さらにとんでもない事件が発覚した。電力を失い、物流が停まり、それでも未だに世界で稼働していた100基を超える原発。運転の停止が間に合わず、津波により建物が破壊され、二十カ所余りの原発で爆発事故が起きていた。核燃料の保管施設が破壊され、放射性物質が顕わになった事故も起きていた。つまり、世界中に放射能の汚染が広がっていたのだった。           第3話 破滅への道       西暦2385年2月、分子雲が地球から少しずつ離れ、世界のネットワークが復旧してくる。  分子雲が薄くなり太陽が眩しく輝いて氷や雪が融け、加えて海水などが蒸発して、世界中が雨雲に覆われ、低気圧、台風、ハリケーンといったものが多発。威力も凄い。雨は降り続いた。それでも気温は上昇を続けた。  雨、風の影響は大きく、世界中で、川の氾濫や土砂崩れが起きて、巨大に成長した氷河も溶けて被害をだしている。    西暦2385年6月、星間分子雲が去って青空が視野一杯に広がっている。 今回の天災により地球の全人口は7億人足らずとなった。9割の地球人が亡くなったことになる。  3月末の日本の登録人口は2321万人となった。    西暦2385年7月、専門家による星間分子雲の襲来により甚大な被害が予想されるとの警告を政治家が軽視し、この惨状を招いたとして、大統領だけでなく政治家に対する批判が猛烈に強まってきた。しかも、分子雲が去った後、天災だったことを強調し自らの責任について言及したものは一人としていない。謝罪すべきと世間は言う。  早乙女凛女史の率いる「女性が自立する会」はこの男性社会への批判を強く主張して全国的に注目を集め出した。今、この機に女性がリーダーシップをとり、そこを変えないとまた同じことを繰り返す、と主張している。    一方、多くの国の政治家は信頼回復を掲げ、自国第一主義に走り、復興のための資源を共有しようとしないため流通しなくなる。そしてトラブルとなりその原因を相手国に押し付ける。    このような事態に早乙女凛女史は総理と話し合った。早乙女はアメリカのアンソワー・ケルビン女史を始め各国の女性リーダーと連携し、資源の共有化を図り復興を共にやり遂げようとしている。だから、その復旧、復興の事業を早乙女に任せると発表して欲しいと迫ったのだった。  総理は世界の状況をみて決断した。資源の需要と供給のバランスを正常化するため、主要国の大統領と協議。復旧等を女性代表に任せることにし、各国はそれを一斉に発表した。    数週間後には早くも資源が流通を始め、復旧等が徐々に加速されてゆく。毎週、その状況を世界同時に発表し、成果を強調した。女性代表者の人気はあがり、大統領が女性に変わっていった。 そして、それなりの成果を上げて行く。    しかし、野心家の男性政治家には不満が鬱積するようになった。 ヨーロッパの国で女性大統領が暗殺された。犯人は元国会議員の男性で、その場で射殺された。だから背景が分からなかった。  人類学者のメイル・リンスプルが男性至上主義を訴えた。多くの男性が賛同し地に落ちた男性の社会的地位を復活しようとした。  しかし、その団体もテロ組織化されて、各国の女性大統領暗殺を企てるようになっていった。自爆テロ、砲撃、狙撃などが頻発し、殺害される女性大統領も続いてでてしまった。    西暦2385年12月28日、国連軍総司令官スーザン・サントス女史は、テロ組織の徹底的な壊滅を公約し、世界中に散在する組織を次々に急襲し壊滅していった。所謂、男狩りである。      ルーイン・デービルはワシントンで生まれ育った。父親は軍人で世界を制覇する武器の管理をしている、と聞いていた。  高校生になると、何となく父が核を管理する部署にいると気が付いた。  徴兵制度により陸軍への入隊を命令された際、面接で希望を訊かれたので、父と同じ部署をと希望した。  そこに3年間勤務し父の苦悩を初めて理解した。自分もあと1年は心が持たないと思った。退役し祖父母の家の農業を手伝った。  農業青年団の仲間に誘われて、農業者の問題を解決してほしいというデモに参加した。それでもデモは弾圧された。理由はないデモはイコール反政府というシナリオが出来ているようだった。反発心がもくもくと湧き立ち、力に訴えるようになった。    ルーインは陸軍の中でも群を抜いて狙撃が上手かった。そこを見込まれた。アメリカ大統領カレン・マッシュ女史をホワイトハウスに入るところで狙撃する計画だ。800メートル離れた地点から大きな木の枝の間を狙って撃つ。殆ど不可能だ。だから警備側もそのポイントを見逃している。一見した後、訓練のため人里離れた山中に半年間籠った。  本番の日、スコープ付きの狙撃銃を備えて待つ。  隊列が来た。銃を構える。大統領の周りを数十人の人垣で固めている。大統領が車から降りた。思いのほか冷静に引き金を引けた。  素早く車に乗る。逃走劇が始まった。自分は、まずニューヨークの与えられたアパートの一室に籠った。報道では男性至上主義組織の犯行と決めつけていた。食糧が尽き、計画に従って田舎に向かった。作業夫として働く。数週間後辺りに軍隊が姿を見せてきた。今度は砂漠へ逃れた。ばらばらに逃げた協力者が捕まり仲間の名前を吐いたようだ。そういう噂が流れ、覚悟した。  思いついたのは父の仕事場だった核施設への侵入だった。核を押さえれば政権に対抗できると思った。  施設が遠目で見える場所で夜を待つ。朝3時、行動を開始した。金網を越え、ドアのシリンダーをレーザーで焼き切った。鍵をいじると警報が鳴るのだ。  入って右突き当りが監視室。静まり返っている。そっとドアを開ける。鍵もかけていない。5名が揃って寝ている。後ろから射殺した。何の抵抗もない。  電源を破壊。非常電源が起動すると、兵士がばたばたと走って外へ出た。侵入者が外にいるとの勘違いだ。ドアの非常時キーをオンにする。そして監視装置を緊急モードにして、カメラで侵入者を検索、掃射。あっという間に10名が倒れる。  外ドア位置まで戻って、正面のコントロール室に向かう。そっと開ける。中には3名、機器とにらめっこをしている。自分もそこにいた。機械を壊さない角度で銃を発射。3名とも殺害する。  外で爆発音がした。軍隊が非常事態を認識して闇雲にドアを破壊しようとしているのだ。交渉もクソもない。舌打ちをする。ただ、ドアの破壊は時間がかかる。それだけ分厚いドア、分厚い壁で囲われている。  ルーインはやけになって核弾頭の発射準備に入った。手順は軍隊で自分が担当したのですべて頭の中だ。一度停電させたので10分必要だ。それまで軍の突入が無いことを祈る。    長い10分が過ぎた。ドアの外では砲撃音が鳴りやまない。緊急時発射手続きに従って震える右手を左手で確り掴んでボタンを押下する。3人の鍵が必要なので、その顔に驚きの表情を貼り付け死んでいる個々人の首から鍵を外して、所定の鍵穴に差し込み回すと発射秒読みにはいる。ここからは80秒で発射される。興奮と緊張で汗が滴り落ちる。外ドアの破壊音がした。核弾頭の自爆装置の制御盤を破壊した。  残り60秒になったとき、部屋のドアに銃痕が多数現れ始めた。突入されるまで時間がない。それを阻止するためルーインは小銃をそのドアに向けて連射する。銃創全部を打ち切るのに60秒。  打ち切ると瞬きする間も無く今度は反対側から銃撃される。ルーインはドアの真正面に立つ、自分の身体に無数の着弾。母の名を叫んだ。      数百もあるだろう数の核弾頭が何処かの敵国を目指し赤い炎を従えて飛び出した。 10分後、アメリカなどを仮想敵国としていた国々から、千発を超えるだろう核弾頭が其々の国を目指して空に舞った。 そして、さらにそれに対抗して数えきれない核弾頭が敵国を目指して発射された。数千もの核弾頭が地球上を飛び交い次々に核爆発を起した。 陸地のほとんどが核の雲に覆われた。    西暦2387年1月25日、日曜日  地球人類の歩みが永遠に止まった。              エピローグ    アップル宇宙連合軍の地球監視船の艦長イプシロンは、3千機余りの超小型偵察機を通し一部始終を見ていた。核弾頭の発射をもって、すべての偵察機、監視衛星や作業衛星の回収を指示した。  そして、たった6時間後には地球上を飛び交う物はなくなった。再び偵察機を出動させ刻々と送られてくる映像を手分けして確認していった。    嘗て東京と呼ばれた大都会に巨大な窪地が出来てる。ビル群は消失している。  艦長が好きだった京都を見てみる。ここも都市があったとは思えない光景だ、何もない。  よく見ると川を人が流れている。ぶくぶくに脹れて死んでいるのだ。川の色が赤いことに気付いた。上流にいくと、妊婦だったのだろう、お腹が裂けて胎児が臍の緒をつけたまま焼け死んでいる。赤黒く焼けた母親の身体、胎児と一緒に内臓が飛び出して辺りを赤く染めている。  艦長は見ていられずに目を背け、アメリカの都市に画面を切り替える。ニューヨークの真ん中にも巨大な空き地が出来ている。地下シェルターへ逃げたとしてもダメだ。土砂などが地表を数メートルも覆って出口はきっと開けられない。  地球上の森林という森林はすべて燃えている。煙が地球を茶色く染めている。    数カ月して地球を離れる前に数千の偵察機に人類の生命反応を確認させた。一週間かけたが何処にも地球人の生命反応は無かった。  「ほかの星の人類に影響を与えず、地球人類だけが滅亡したことは良かった」 艦長は部下を前に少し悲し気にそう呟いた。 これからは自然が地球を支配する。やがて誰もが憧れた地球の姿がそこにできるのだろう。    アップル宇宙連合軍の総司令官への状況報告と、併せて数万年に亘る地球監視活動の完了報告のため、我が古里シュラン星に向かうようパイロットに指示した。              完
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加