若手社長は一途な片思いが爆発したようです

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もういいって告げた彼は、床に散らばったパスタを手で拾って、ゴミ箱に捨て 他のを開けて、私の前に座ればフォークでたらこクリームパスタを丸めて、口へと運んでくれる。 「 んー、おいしっ 」 「 本当はさ…家政婦みたいな使用人を雇ってやりたいんだ 」 「 ん? 」 急に話し始めた事に疑問を抱けば、彼は目線をチラッとこっちに向けて、テッシュを掴み軽く口元を拭いてから、またプラスチックの使い捨てフォーク持ってパスタを一口に丸めて向けてきた。 「 あー…… 」 それをごく普通に口を開けて食べれば、彼の話は続く。 「 でも…多分、大半の奴は…俺より御前が何もできない事に苛々するだろうし、それで…御前が此処にいたくないって思われたくないんだよ 」 「 ん? 」 「 急いでたとはいえど…あの家より狭い、このマンションに押し込んだのは…。俺だからな… 」 言ってる事の意味が余り出来なくて、頬を膨らませて食べながら見ていれば、彼は同じフォークを使い自らも大口で一口食べては、咀嚼を2、3回して早々飲み込み、言葉を続ける。 「 こっちに来て、御前が一人である程度できるまで、この部屋で…って思ってたけど、25年間の生活が…そう直ぐに変えれるはずもないよな 」 「 出来る事…増えたよ? 」 「 まぁ、そうだな…良くやってるよ。でもな…恋人作ったり、結婚して…誰かと生活するには、今以上に出来る事を増やさなきゃいけないんだ。そりゃ俺みたいな奴なら…今のままでいいけど 」 慣れた手つきでパスタを丸め、それが徐々に一口サイズより大きくなるのを眺めながら問う。 「 智ちゃん…私が誰かと結婚してるの、想像つく? 」 「 は……? 」 本人が話し始めた内容なのに、問い掛ければフォークは簡単に真っ二つに折れたのを見て、パスタから視線を彼に上げる。 「 だって私…恋人と言う以前に、恋愛すらしたこと無いよ?28歳になるけど… 」 「 ……………… 」 知ってるはずだが?と思って、パスタが欲しくてそっと手を伸ばそうとすれば、彼はガシっとその手を掴んできた。 「 ん? 」 「 そうだ。何も、他人でなくていいんだ 」 「 ?? 」 「 御前みたいなダメっ子と一緒にいられるのは俺しかいねぇじゃん。…未來、俺と結婚しよう 」 恋人とか、恋愛とか…そんな事を話してのに…凄く順番が飛んだように思えて傾げた後に、視線を部屋へと向ける。 「 この部屋を見ても言えるんだ? 」 「 言える。んなもん、慣れてる 」 私が変わり者なら、この人はもっと物好きだろうなって思う。 真剣な顔で告げた表情を見てから、掴まれた手を解いて、小さくなったフォークの付け根を掴まみ、大きなパスタを口へと頬張り、少し無言で咀嚼してから、飲み込んで答えた。 「 私。智ちゃんとは結婚しないよ 」 「 は?なんで…… 」 驚いてる様子の彼に、小さくなったフォークを容器に入れる。 「 だって…。私には、智ちゃんには幸せになって欲しいから。大丈夫だよ?放置してたからきっとすぐに餓死して死ぬから、智ちゃんは、智ちゃんの好きな子と… 」 「 御前…本当、バカだよ…… 」 結婚とは、好きな人とすること…程度の認識はもちろんある。 だからこそ、生活の免除も全てしてくれてる彼にはさっさと私を餓死でもさせて死なせてから、好きな子と一緒になって欲しいと思う。 「 俺が、只の幼馴染みに…家賃や生活費全額負担して、尚且つ私生活の全てを援助する御人好しとか思ってんの? 」 「 んー………うん? 」 「 はぁー……もういいや、考えるの止めた 」 深いため息を吐いて言った言葉に、結論が出たんだね!と喜んで軽く手を叩く。 「 おー、私を殺す決意でもできた? 」 「 ちげぇよ! 」 けれど、小さなテーブルを超えるように乗り出した彼は、また耳まで赤く染めては肩に触れそのまま背後へと倒してきた。 「 ん? 」 「 ……なんで俺、今迄律儀に我慢してたんだろ。馬鹿みてぇ…来る度に裸見て、風呂入れて…俺が綺麗にした髪や容姿を、他の奴に触らせようとしてなんてアホだろ 」 これは、私に言ってるのではなく… 彼自身が、自分に対して言ってるのだと何となく察すれば、男らしくなった手は長い髪や頬に滑らせ、僅かに荒れた息を吐く。 まるで様子は、獲物を捕まえた狼のようだと思う。   「 好きな奴も、恋人もいねぇ御前に…何をしようが俺の勝手だろう。なぁ、未來…そう思わないか? 」 「 ごめん……。良く理解できない 」 「 ………… 」 「 あーでも、智ちゃんが、狼っぽいなーとは思ったよ?格好いいね 」 この状況で何言ってんだろうと思うけど、両手を伸ばして彼の頬を触れば、その瞳は人間ではなく獣のように瞳孔が細くなり、彼は右手首を掴み手の平へと口付けを落とす。 「 俺は、狼じゃなくて…狗だけどな… 」 「 ホンモノの? 」 何となく、そう思って言えば…彼は小さく笑ってから、こちらを向いて髪に触れ、顔を寄せて触れる程度の口付けをする。 目を開いてたから分かったけど、彼の容姿がマズルの短い黒柴のような外観に変わった。 「 狗谷家は希に…狗神の呪いを持つ者が生まれる。俺がその呪いを持って生まれた子供だ。だから…異性と触れ合うと獣になるから、心に決めた相手にしか姿を見せることができない…。気持ち悪いか?驚くか? 」 急にそんなことを言われてどんな反応をすればいいか迷うけれど、何となく必要以上に触って来ない理由が分かり、嬉しく思う。 「 私…ネコ派なんだけど 」 「 知ってる。だから尚更…嫌だった 」 眉毛辺りに茶色の模様と、顔の中央から首元に掛けて模様が入った彼の頬や首を触っていれば、その身体は私の方へと下がり、首筋へと顔を寄せる。 「 生ゴミと汗と猫の匂いがする…御前はいつもそう… 」 「 嫌い? 」 「 ふっ…どうせ俺の…匂いに染めるのだから…。まぁ、その前に風呂と片付けをしよう 」 やっぱりこの部屋でこれ以上するのは気に障るらしい智ちゃんは、スッと身体を起こした後に首を振れば人の姿へ戻ったのを見て、仰向けになったまま彼に視線を向けた。 「 智ちゃんは…ワンちゃん 」 「 嗚呼、そうだな 」 彼は先にゴミを片付けてるのを見て、ぼんやりとスーツ姿の後ろ姿を眺める。 「 ワンちゃん…… 」 「 んー? 」 「 格好いいよ 」 智ちゃんは元々イケメンと言われてたし、それが成長と共に拍車がかかったみたいに大人びてる。 それなのに、何処か幼さが残る面影があるから同年齢らしく、年上過ぎない感じがして心地がいいんだ。 「 はぁー…ほらな、御前のそういうところ…。てか、ゴロゴロしてないで風呂は入れ。あ~待て…どうせ脱ぎ散らかした洗濯物で溢れてんだろ。片付けて湯を入れてやるから先に浸かってろ 」 「 はーい 」 片付けていた手を一旦止めてから、先に風呂場へと行ったのを見て、何となく天井を眺めた後に目を閉じていれば、少し離れた先から悲鳴が聞こえてる。 「 あぁぁあ!!あまっ、未來!!生理になったら、生理用品つけろって言ってんだろ!なんで、毎回毎回…着けずに過ごしてんだ!! 」 「( 近似の迷惑にならないのすご… )」 このマンションの防音って結構凄いんだなーと彼の言葉とは全く関係ないことを考えていれば、15分程で風呂場を綺麗にした彼はげんなりとした顔で戻って来た。 「 風呂は入れ……。って事は…寝室も血の海か…聞いておくが、終わってんだろ? 」 「 終わってるー 」 「 そうか… 」 お風呂だと思って起き上がれば、智ちゃんは私の方へとやって来るなりしゃがみ込み、服に触れる。 「 脱げ、どうせずっと着てるんだろ。だから脱げ…全部 」 「 はぁい 」 バンザーイと子供っぽく両手を上げれば、さっさと全てを脱がせた後にお風呂へと突っ込まれた為に、シャワーの蛇口を捻る。 「 ひっやぁぁあ……!! 」 「 どうした未來!? 」 「 冷たい…… 」 「 湯の出し方ぐらい、いい加減学べよな…ったく… 」 走って来た彼は、呆れるように額に手を置いた後、シャワーノズルを奪い一旦蛇口を締めてから靴下を脱ぎ、ズボンを捲りあげて入って来た。 「 もういい、先に洗ってやる 」 いつもと同じパターンだと内心思い、彼に任せることにした。
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