若手社長は一途な片思いが爆発したようです

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表情の無い女子を好きになる、そんなモノ好きな男子は存在しなかったし、 私も恋話とかに花を咲かせる子達についていけなかったから、恋愛を知らないまま生きていた。 そして相変わらず、母と一緒にお風呂に入り、髪も身体も全部洗って貰ってたし、下着も服も母の好みであった。 其れが当たり前だったから、なんの不自由なく暮らしていた。 けれど、働く事すら出来ない私が25歳になった頃 母は、飲酒運転の普通車に轢かれて、突然とこの世を去った。 葬儀の仕方も分からず、全て遠い親族がしてくれたけど、葬式が終わるまでまったく泣くことをしない私を、彼等は不気味に思ったらしい。 「 母親が死んだのに泣きもしない 」 「 表情一つ変えないなんて…本当に人の心はあるのかしら 」 「( 私に人の心はあるのだろうか… )」 悲しいのがなんなのか、それすら分からないから泣けなかった。 でも、葬式が終わってから家に帰った後… 誰もいない家に違和感を感じていたんだ。 いつも時間になるとテーブルにご飯が並び、食事を終えたらお風呂に一緒に入って、 寝る時間も゙ おやすみ ゙と聞いてからだった。 一人になってから、初めて自分がなにも出来ないのだと知り、冷蔵庫に入っていた作り置きの惣菜を食べたりそれが無くなったあと、小麦粉を食べたり、硬いお米を食べて、キャットフードも口にした。 食べる物が無くなって、どうやって生きればいいのか分からない時に、アカツキを抱っこして、外に出てた。 母が亡くなってから風呂に入ってもいない、汚くて汚れた身体。 ボロボロの髪や服装に、通行人はホームレスや家出した女とでも思っただろう…。 実際にそう…もう如何やって生きていけばいいか、分からなかったんだ。 「 アカツキ……お腹空いたね 」 「 ヌゥー…… 」 キャットフードも食べて終えてしまって、どうやって買えばいいのかもわからない。 母がお金をどこに隠してるのかも分からないし、根本的に買い物の仕方も分からない。 この世界は分からないことだらけで、アカツキを拾った公園の、古びた木のベンチに座った。 「 どうやって……生きればいいんだろう… 」 ずっとお母さんがいると思った。 ゙ 貴女は何もしなくていい、何も出来ないんだから ゙ そう言ってたからバイトとかもすることもなかった。 社会性が無いのも理解してる…。 でも、だからといって動く、行動力に関しては欠落してた。 ぼんやりと暗くなって、星空が見えてきた頃に、腕の中にいたアカツキはいつの間にか何処かへ行って消えてた。 其れでも、只一点を眺めていれば息を切らすような声が聞こえたんだ。 「 未來! 」 「 ん? 」 何処かで聞き覚えのある声だと思えば、高校卒業後に上京して、引っ越したはずの智希(ともき)の姿があった。 「 あれ、智ちゃん……東京なんじゃ… 」 「 あれ、じゃねぇよ!御前、玄関の扉は開けっ放しで、部屋は散らかってるし…アカツキはいねぇし…って、裸足…… 」 何故そんなに焦ってるのか分からないけど、彼は、私の前に来て姿を見れば大きく目を見開いてから、綺麗な紺色のスーツを気にもせず片膝を付いて、手を取った。 「 御前……靴の履き方すら、知らなかったのか…… 」 「 うん? 」 智希(ともき)は何となく、私が何も出来ないのを知っていた。 だから、困ってる時はそれとなく助けてくれていた。 飲み物を開けてくれたり、コンビニで買ってくれたおにぎりのラップを外したり、ペットショップで猫の首輪を一緒に探してくれたり…。 でも、今は…知ってる人がいる事にど事なく嬉しくなって笑った。 「 智ちゃん、私…お腹空いたの。でもね、お金の場所も買い方も分かんなくて、どうしようかなって…考えてた 」 唯一、感情で得だ 笑う ゙と言う事だけ出来る私は笑って言えば、彼は眉間にシワを寄せて汚れた手を握り締めては俯いた。 「 ふざけんな…ふざけんよ……、なんで、あの人は…御前を置いていったんだ…責任取れよ……。…俺に許可してくれていれば…もっと早く…戻って来れたのに… 」 「 どうしたの、智ちゃん?…智ちゃん、なんで泣いてるの? 」 肩を震わせて泣く彼に、理解が出来なくてそっと反対の手で頭を撫でれば、彼は不器用に笑って、顔を上げた。 「 辛いからだよ…。俺に連絡が来たのが…昨日だったから 」 東京からここまで来るのに、新幹線で12時間以上かかる それなのに、仕事とか色々あるだろうに彼は全てを投げ捨てて、急いで来てくれたんだとこの時はわからなかったんだ。 只その言葉に、小さく傾げては笑う。 「 へぇー凄いね、智ちゃん。スーパーマンみたいに飛んで来たんだ? 」 「 チケットが取れた新幹線だがな…。もういい、さっさと帰って飯にしよう。ってその前に…アカツキを探すか…。アカツキー? 」 「 ヌゥー… 」 「 あ、アカツキいた! 」 いなくなってたと思ってたアカツキは、彼の声に反応してベンチの下から出てくれば、その重みのある身体を抱き上げる。 「 コンビニでアカツキの餌も買って帰るか…。御前と俺のもな 」 「 アカツキ〜、ご飯だってー。良かったね 」 「 ナゥーゥ 」 それから家に帰り、散らかって汚い部屋に何も言うことなく、先に私達にコンビニで買ったご飯を食べさせてくれた智希(ともき)は、真っ先にお風呂へと突っ込んだ。 「 おま、身体も一人で洗えないのか!? 」 「 ちょっとは分かるよ? 顔だけは洗える」 「 洗えてねぇよ!御前はアライグマか!あぁ〜、バカ!!そんなゴシゴシしたら肌が傷つくだろ!!一体御前の母親は、どんな洗い方を教えてんだ!? 」 散々文句を言われて、何度もバカバカと連呼をされていたけれど、智ちゃんは沢山の泡を使って、生まれてから一度も切ったことのない膝下より長い髪や身体も綺麗に洗ってくれた。 お風呂から上がって服を着せ、ドライヤーでニ時間以上かけて髪を乾かし、伸びた爪を整え、そして最後は部屋を綺麗に掃除して片付けてくれたんだ。 「 仕事後なのに、すっげぇ疲れた…… 」 「 智ちゃん…眠くなってきた…… 」 「 じゃ寝てください……って、まさか… 」 目を擦る私に、ハッとして見上げた彼に、そっと両手を向けた。 「 おやすみ、なさい…しよ 」 「 ……未來、マジで言ってる? 」 「 うん? 」 何が?と疑問になっていれば、智ちゃんは顔を赤く染め視線を外した後に、しゃがんでいた身体を立ち上がらせ、私の方へと歩いてくればそっと抱き締めてきた。 「 こう? 」   「 ん……おやすみ、智ちゃん…。お母さんより…大きいね 」 背中に回す腕が、完全に自分の手に触れる事が出来ないと思って言えば、彼は髪へと頬を滑らせ耳元へと顔を寄せる。 「 当たり前だろう…。もう俺、188cmはあんだから… 」 「 なにが? 」 「 身長な。御前は、ほんと…ちいせぇわ… 」 156cmはある私に、小さいという彼が大きいということは察しがつく。 胸元に感じる匂いや体温に気持ちが落ち着いて、フッと頬が濡れた。 「 あ、れ……? 」 「 やっと…泣いたか。好きなだけ泣けよ…それが悲しいって感情なんだ 」 「 智ちゃん…私、悲しいの……? 」 「 嗚呼、知ってる… 」 溢れる涙を彼は隠すように、胸元へと顔を押し付けるように抱き締めては、泣き止むまで頭を撫でてくれた。 いつの間にか、泣き疲れて寝落ちしたあとに、彼は夜の間に荷物を纏めてくれたんだ。 「 俺の紹介で、マンションを借りる事になった。代理契約で借りれるから…って言っても分かんねぇか。とりあえず、今日でこの家とはバイバイだ 」 「 ん?バイバイー 」 「 はぁ…。まぁいい、アカツキと一緒に東京に連れて行く。残りの荷物は引越し業者に任せて、俺達は先に行く。てか…俺は昼から仕事があるから急ぐ 」 25年住んでた家とはお別れをして、ブツブツと独り言を言ってる智ちゃんに連れられて、アカツキと一緒に何も知らない土地に行くことになった。 それから三年、彼は当初の目的を失いかけていた。 「 一人暮らしさせたら…そこそこ出来るようになるって……期待したのに……。なんで、ニ週間…見ない内に…御前とアカツキは痩せてんだよ!!自分で買って、飯を食えよ!! 」 「 部屋を出ると、迷子になるから… 」 「 この三年で、マンションから一人で出たことねぇくせに!!あぁぁぁあ!デリバリーぐらい覚えてくれ!!! 」 スーツ姿で頭を抱えてる彼は、相変わらずの様子に笑ってみていれば、何処か不機嫌そうにしてる事に傾げる。 「 デザートぐらいあけれるようになったよ? 」 「 本当か?ほら、プリンだ。あけてみろ 」 どこからともなくプリンを取り出した彼に、受け取ってから蓋と容器を一緒に持って力を込める。 「 ふーーーんっ!!!ほら!! 」 ポンっ!という音と共に蓋と容器が分裂して、彼に自慢気に見れば智ちゃんは自身の服についたプリンを指で掬って舐めては、片眉をひくつかした。 「 ……で、この後どうやって食べるつもりだ? 」 「 え?普通に食べるけど 」 「 は?っ!!? 」 どう?って言われると食べろって事なんだと判断して、四日ぶりの食事ともあって残したくないって気持ちが強く、彼の横に手をつき顔を寄せ、腹辺りへと唇寄せプリンを吸うように食べる。 「 ッ…… 」 「 このプリン、甘くて美味しいね?……智ちゃん? 」 残さず食べ終え、スーツですら舐めてから顔を上げれば、そこには片手を顔に当て隠してる様子の彼に傾げれば、いつもの台詞を吐かれた。 「 おま、ほんと……ばか…… 」 耳まで真っ赤に染めてる訳を知らず傾げていれば、彼は深いため息を吐いてからの立ち上がる。 「 とりあえず…適当に買ってきたから先に食ってろ。その後、アカツキ共に風呂に入れてやる…片付けるか…。どうやったら二週間で…こんな腐海の森になるんだよ… 」 上着を脱いでから腕まくりをする彼は、散らかったゴミ部屋を見渡してから、掃除を始め。 私はここに来て、フォークを出して、容器を開けて食べるってことを学んだ為に食べることを優先する。 「 智ちゃん…麺が、逃げた… 」 「 ミートソースパスタにした俺が…バカだった 」
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