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今の君は、どんな絵だろうか。
あの頃、君が俺に教えてくれた。曖昧さは怖いと感じられること。その中に、本当の俺が確かに存在すること。
なんで気付けなかったのだろう。はっきりと、表情や態度で示してくれたら、まだ良かったのに。
なんで君の笑顔だけは輝いて見えて、なんで君の言葉だけが、俺の中に爽やかな風を吹かすのだろう。どうしたって、俺は君に惹かれていってしまう。
けれど、どうせ叶わないと、諦めることすら、許してはくれなかった君が。
君だけが、本当の俺を見て、『かっこいい』と言った。
高校一年、十五歳の夏休み。俺に、初めての恋人が出来た。世の中に自分自身を馴染ませるために、選んだ人だった。
「つっ、付き合ってください!」
そう、勢いよく告白してきてくれた人の容姿を見て、【本当の俺】がバレさえしなければ、大丈夫。そう思って頷いた。
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