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夜が明け始めた頃 雪の中に隠れた一軒家が一人寂しく佇んでいる。 疲れ切った体にムチをうち、光へと突き進む。 ズボッズボッズボッズボッ 雪が太ももまで埋もれようとも、みぞれが襲いかかろうとも藁にもすがる思いで一軒家へ歩みを進める。 近くで眺めると屋根の部分は剥がれ落ちかけ、窓ガラスには所々にひび割れが生じている。 朦朧とした視界を力の限り広げると中には七十はとうに超えているようなおばあちゃんがテレビとにらめっこをしている。 「すいませーん。」 しゃがれた声を振り絞り呼びかけても応答はない。 窓ガラスを叩くと、ガラスの破片が少しずつ足元へ散らばる。 玄関を叩くうちに体が入れる隙間が出来る。 男に考えるすべはない。 不法侵入と叫ばれてもここには二人しか存在しないような世界  電話もきっと繋がらないだろう。 男はゆっくりと玄関へ侵入し、部屋へと向かう。 地上の楽園のように体をあっという間に温め、その場で倒れ込んだ。 部屋を漁る夢を見た。
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