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「おーい、聞こえるか? おーい。」 目を開けると部屋にいたおばあちゃんが焦り果てた表情で男を見つめていた。 「ギャアァァ」 男は驚きのあまりテーブルに腰を打つ。 「そんな驚くことなかべ、ってかどうしたんぁね、わざわざこんなところまで来て しかも体は冷たいし。」 咄嗟のことで何を喋っていいかわからない。 ここで怪しまれれば未来はない。 「すいません、吹雪の中道に迷ってしまって寝ることもできなくて それでやっと見つけたのがここだったんです。」 「あらそうだったの。 あんたどこから来たの?」 「えーっと 東京からです。 実は旅が好きで全国各地を回っていて、最近は秘境駅を回るのにもはまっていてつい迷子になっちゃうんですよね。 にしてもこんな吹雪の中迷子になるなんてとんだ大馬鹿ですよね、自分ったら。」 「ホントそうだ。 でも死ななくてよかったよ。 ここで死なれちゃアンタも報われないだろ。 とりあえず寒いだろうからゆっくり泊まりなさい。 好きなだけ泊まっていいから。」 「いや申し訳ないです。 それに」 「それに?」 「失礼な話ですがここは他に何も見当たりません。 恐らくですが食料もそんなに..」 「そんなことはねえ むしろ余るほどあるよ。  本当はお裾分けしたいぐらいなんだけどな。 ちょっと見るといいさ。 でももう少し休むか?」 「いえそんな でも見てみたいです。」 「ならこっち来てくれ。」 そんかおばあちゃんに連れられ、男は再び吹雪の中へ戻る。 吹雪の中で感じられる寒さが何故か恋しく感じたのは男だけだろう。 「ほら見てみ」 一面に広がる野菜畑 東京ドーム何個分とまではいかないが、匹敵するほどの野菜が埋め尽くす。 「なるほど、これじゃ一人じゃ食べ切れないですね。」 「だろ、しかも似たようなもの育ててるからいい加減飽きてしまって アハハ」 これほどまで口を開けて笑う人も珍しい。 歯はほぼほぼ残っており、健康を感じさせる。 「ってなわけで泊まってくれる方がありがたいわけよ。」 「なるほどこれは私にとっても好都合ですね。 二日前から全く食べてなかったんで遠慮なくいただきます。」 「じゃあ早速料理してくるか。 あんたはゆっくり休みなさい。」 「いえいえ私も手伝いますよ。 泊めてもらって何もしないなんて嫌です。 そしてほら」 雪の中を大ジャンプし続けて元気アピールを見せる。 「こらこらそんな騒ぎなさんな。 なら手伝ってもらおかね。」 こうしておばあちゃんとの生活が始まった。
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