第1話 一万円男

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「どうしたら受かるの?」と友達に訊きたいのだが、プライドが邪魔して、なかなか訊きにくい。だって、就活前はみんなが「どうしよう」と私に訊いてきて、私が「いままでやってきたことを信じて、自信持って!」などとアドバイスしてた。 卒業に必要な単位はかなり取得済みなので、4年は受講しなければいけない講義も少ない。 15時にゼミが終わり、みんなと別れて自宅(東池袋のアパート)に向かった。 途中、夕食用にと池袋サンシャイン前の西友に寄り298円の唐揚げ弁当を買った。最近は就活が忙しく、バイトが減ったので、節約だ。 帰宅途中、サンシャインのスペイン階段に差し掛かると、いつも誰かは座ってはいるのだが、この日は少し似つかわしくないスーツをビシッと着た30歳半ばぐらいの男性がちょうど下から1/3あたりの側壁に隠れるように座っていた。 違和感を覚え、少し立ち止まって見入ってしまった。 スマホを見ながら、周りを気にしている。明らかに挙動不審だ。 上から若い女性が降りてきた。一瞬振り返り、またスマホに見入り操作した。 『盗撮だ!』と直感した。
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