第1話 一万円男

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怪しまれないように真面目なサラリーマンの格好をして盗撮する人がいる、という話しを聞いた事がある。自撮りモードでスマホを見る振りして、女性のスカートの中を撮影しているに違いない! 私はもともと正義感は強い。それに就活が上手く行ってない事もあり、少しムカついていたので、その男性の方へ向かった。 彼は私の姿を認めチラッとこちらを見たが直ぐにスマホに見入った。 階段を上がり彼の前に立った気配に驚き、彼が私を見上げた。 私は彼を睨んでいた。 「あの・・・何か・・・」彼がボソッと言った。 「迷惑です! 盗撮なんて。警察に通報します!」 一瞬、間が空いて、何のことか解らない、という表情で彼が言った。 「・・・はぁ? 盗撮?」 「そのスマホで女性のスカートの中、撮ってたでしょう!」 「・・・・」 彼は黙って、自分のスマホと階段を上から下まで見渡してから静かに口を開いた。 「君、小学生のころから理系は苦手だっただろう」 「え?」まあ得意では無かったし、今も文系の法学部だ。けど、何の話しだ?
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