第1話 一万円男

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「こんな(斜度の)ゆるい階段で、この場所で手に持ったスマホからどうしたらスカートの中を写せるんだ?」 「・・・・」今度は私が黙ってしまった。 「どうしても写すなら、女性が近づいてからこうやって地面近くにスマホを持ってこなきゃ無理だろう」 確かに、言われてみればその通りだ。 しまった、私の早とちりだった。ここは謝った方が良さそうだ。 「ごめんなさい」 就活が上手くいかないと、すべての運が悪い方向に向く。きっと『疑いやがって。侮辱だ』とか『馬鹿野郎、もっとちゃんと謝れ』などと文句言われるだろうな。こんな風にスーツをビシっと着ている奴に碌な人はいない。(美穂の個人的見解です) 「いや、僕がきっと怪しい動きをしてたのだろう」 ところがしつこい追求も無く、あっさりと言われたのでホッとしてしまい、思わず「お詫びになにか・・・」と口走ってしまった。 少し深呼吸してから落ち着いた口調で彼が言った。 「君に2つ、言っておきたいことがある」 「はい?」
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