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カエルくんのともだち
僕の友達、カエルくん、の話をしようと思う。
もちろん、カエルくんというのは本名じゃない。あくまでアダ名がカエルくんであるというだけだ。一見すると悪口に聞こえるかもしれないけれど、この名前は本人も結構気に入っているらしい。というのも、彼は小さな頃からカエルのキャラクターが大好きで、ランドセルにも筆箱にもカエルのキーホルダーをじゃらじゃらとぶらさげていたからである。このアダ名の由来もそれだった。まあ、彼がカエルくん、なんて呼ばれる理由は他にもあったわけだが。
「サツキくん、一緒にかえろー」
「おう」
僕と彼は四年生で同じクラスになった。とはいえ、一年生から彼のことはよく知っている。家がすぐ近くで、通学班が一緒だったからだ。毎日のように仲間たちと待ち合わせをして一緒に学校に通い、帰りも共に帰ることが少なくないともなれば仲良くなるのも必然だろう。
彼がちょっと変わり者ながら、気の良いやつだったというのも大きい。度の強い大きな丸眼鏡に、同い年の僕よりずいぶん小さな背丈。彼は帰り道、河原の近くを通るのが大好きだった。その草むらに、彼が好きなものが見つかることが多かったからだ。そう、そのアダ名の通りの生物、蛙である。彼はカエルのマスコットも好きだし、本物の蛙も大好きだったのだ。
「いたか?蛙」
僕と一緒に帰る時も、必ず河原に寄り道する。その日も彼は暫く雑草の生えたあたりをがさごそしていたが、諦めたように振り返って首を横に振った。
「ううん、いないみたい。最近雨降ってないから」
「そっか。やっぱ蛙は雨が好きだもんな。もうすぐ六月だから、そうしたらいっぱい見つかるって、きっと」
「うん。でも」
彼はじっと空を見上げて、ぽつりと言ったのだった。
「明日は雨降るから、きっと見つかると思う。サツキくんも、カサ持ってきた方がいいよ」
そう、彼がカエルくんと呼ばれるもう一つの理由。それは、彼は“雨を予告する”ことができるから。
天気予報ができるわけではない。雪や晴れ、曇りなどを正確に当てられるわけでもない。ただ、雨が降る時だけは絶対に、前日より前にわかるというのだ。天気予報でいくら晴れだと言われていても、カエルくんが予告すると必ず雨が降る。僕は一年生の時からそれを知っていたのだった。
どうして雨が降るのがわかるのか。僕がそう尋ねると、カエルくんは以前こう教えてくれたことがある。
「ボクには、蛙の神様がついてるんだ。神様が、雨が降る日だけは事前に教えてくれるんだよ」
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