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それに知り合いに天気予報士がいて入れ知恵してもらっている、というのもまったくありえない話とは言い切れなかった。僕は友達だから、カエルくんが嘘を言っているなんて微塵も思ってはいなかったけれど。
「蛙の神様に教えて貰ってるだってえ?ははは、そんなわけねーだろ、ばーか!」
確かなことは、川口くんがまったくカエルくんの言葉を信じていなかったこと。
そして、カエルくんに恥をかかせてやろうという悪意マンマンだったということ。
「もし本当だっていうならよお、その神様とやらに教えてもらってくれよ!次に雨が降る日はいつだ?」
「おい、無茶言うなよ!カエルくんは、雨が降る前日じゃないとわかんないんだぞ!?」
僕は慌てて止めた。カエルくんが雨を予告してくれるのは基本的に前日で、前の日じゃないと彼は予報が出せないと思っていたからである。そして、明日は雨が降らないだろう、という予告を既に貰っていた。プロの天気予報士だって、一週間も先になれば正確な予報は難しくなってくるというのに。
「……次の雨は」
カエルくんは困ったように言った。
「今週の、金曜日に降るよ」
「本当だな?天気予報では晴れマークついてたけど嘘じゃねえんだな?嘘だったらお前、全裸で廊下走れよ?」
立派ないじめだ。しかし川口くんは一方的に言い捨てると、じゃあな!と教室を出て行ってしまった。僕は焦ってカエルくんの傍に駆け寄る。
「あんな奴らなんかほっとけよ。もし外れても、裸になんかならなくていいからな?」
「ありがとう、サツキくん。でも大丈夫。雨は、本当に降るから。間違いないから」
心配する僕に、カエルくんは困ったように笑って言ったのだった。彼を信じていないわけじゃない。それでも僕は、ハラハラしながら祈るしかなかったのである。
頼むから金曜日、雨よ降ってくれ、と。
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