カエルくんのともだち

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 彼はじっと、ややオレンジに染まり始めた空を見上げて言ったのだった。 「明日の雨は関東地方に、朝降らせるだけのつもりだったんだけど……予定変更する。確か川口くんの家ってさ、●●町の、三丁目付近だったよね?」  結論を言えば。  翌日、とんでもないことが起きた。金曜日、朝降った雨は昼には上がっていたのだが――夕方再び、極めて局所的な土砂降りが降ることになったのである。それも川口くんが家に帰るタイミングで、川口くんの家の周辺だけで。  もう雨は上がったと思って学校に傘を置いていった川口くんは、狙いすましたようにずぶぬれになったという。そして、そのまま風邪をひいてしまったそうだ。彼は火曜日まで学校に来なかった。楽しい土日も、家で寝込んで過ごしたというのだから気の毒な話である。  これはひょっとして、と。驚いた僕がカエルくんに尋ねると、彼は申し訳なさそうに告げたのだった。 「ごめんね。……ボク、実は君にも嘘をついてたんだ。ボク、雨がいつ降るのかわかるんじゃないんだ。……自分が好きな時に、雨を降らせることができるんだよ。蛙の王様に、そういう力を貰ったんだ」  いわく。彼は前世で、とても功績を挙げた偉大な蛙だったという。  そしてご褒美として蛙の王様に人間に転生させてもらい、雨を降らせる能力をもらったのだそうな。その力を、私利私欲のために使わず、この国に安定した雨を供給するために使うことを約束させられた上で。  ただし、雨を降らせる能力者は複数いてお互いにやり取りができないため、たまに同じエリアに同時に雨を降らせすぎてしまったり、蛙の王様=神様が加減を間違えてしまって大雨になってしまうことがあるそうなのだが。 「こんな話、突拍子なさすぎるよね。信じられなくても、無理ないよね……」 「……いや」  確かに、まるでおとぎ話のような話だ、とは思う。  でも僕は、カエルくんの言葉を信じた。信じられなくても、信じることにしたのだ。何故ならば。 「お前の話はそりゃびっくりしたけど。……その話は信じられなくても……お前のことは信じてっから。お前が言うんだからどんなとんでもない話だって信じるよ。だって、友達だからな」 「サツキくん……!」 「ははは。川口くんに仕返ししてくれて、ありがとよ。でも次は、僕もきっちりやり返すけどな!」 「あはは」  僕には友達がいる。  カエルくんというアダ名の、ちょっと不思議な友達だ。  彼は今日も僕と一緒に河原で蛙を探して笑う。次の雨の日を、楽しく相談しながら。
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