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 子供が二人とも独立して、また夫婦二人っきりの生活に戻った矢先のことだった。妻の美由紀にステージ4のガンが発覚した。それからはあっという間だった。いきなり妻に先立たれてしまった僕は、ショックから立ち直れずにいた。仕事も全く手につかない。  結局僕は、会社を辞めることにした。定年まで後六年を残すところだったが、折しも不況で会社が早期退職者を募集しており、破格の退職金を払うというのだ。渡りに舟だった。  退職したとしても、一人になった僕を気遣って長男夫婦が同居してくれることになったので、生活面での不自由は全くない。家のローンも既に完済している。  だけど……  僕は沈みこんだ気持ちを抱えたまま日々を過ごしていた。もう一度美由紀に会いたい。再びこの手で彼女を抱きしめたい。でもその願いが叶うことはない……  ……本当にそうか?  ふと、僕の脳裏のテキストバッファに出現した、この疑問符が発端だった。  確かに美由紀は、僕の中では未だに存在している。それをこの世に召喚させることはできないか?  もちろん、普通に考えたらそんなことができるはずはない。  しかし。
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