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石田に借りを返さなければならないと思う。飲み会の時、授業とバイトがなければ、写真部の部室に入り浸っていると言っていた。
部室を訪ねると、案の定、石田はいた。単刀直入に切り出す。
「借りがあるのが気持ち悪い。さっさと清算させて」
石田は紫煙を燻らせ、しばらく考えている風だったけれど、口を開き、言った。
「一日、倉橋の時間をくれ」
「私には恋人がいるんだけど」
「それは覚えてる。写真のモデルになってほしいだけだ。やましいことはしない」
やましいこと。浮気にあたることか。
どこからが浮気なんだろう。セックスは完全にクロだ。キスも駄目だと思う。食事? 二人きりになること? それとも。
「撮影は着衣だし、指一本触れない」
石田の言葉を信じることにした。早く終わらせて、楽になりたい。
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