あなたは泣いてもいい

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 石田と一緒にいるようになってから、私の周囲の人間はがらりと入れ替わった。  風通しがよくなった、というのは失礼な言い方かもしれない。でも、「品行方正ないい子」を求めている人は去り、馬鹿でわがままで臆病な私と遊んでくれる人だけが残った。  ひどいことをした人間は、ひどい目に合わなければならない。ずっとそう思っていた。  私はひどい目には合っていない。今はまだ。でも、はっきり目に見える罰が下されたら、きっと、もっと楽だったろうとも思う。  全てが許される訳ではない。やってはいけないことはある。でも、追い詰められると理屈では割り切れないことをしかねない。私は、やってはいけないことをしないと、そのことに気づけなかった。本当に、ひどい話だ。  でも、今、なぜか、人から寛容だと言われることが増えている。以前の方が全てを許容していたはずなのに。 「人の恋愛にどうこう言えないよ。恋は理不尽なものだし」  恋人を捨てた私に、友達が言う。 「最近の髪型と服、すごく似合ってていきいきして見える。私は今の百合香が好きだよ」  今の私。長かった髪をショートにし、明るめの茶色に染めた。くっきりしたラインのカラフルなメイク。品のいい清楚な服をやめて、ジーンズにビビッドな色使いのカジュアルなトップスを合わせている。外見を変えてから、毎日が楽しい。以前は服の選択が楽しいなんて思ったことはなかった。
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