あなたは泣いてもいい

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「あとは写真かな」 「写真?」 「石田くんが撮る百合香、すごく表情がいいんだよね。あれは単に技術の問題だけじゃない気がした。よく言うじゃん、好きな人が撮る時、モデルは一番いい顔するって」  思い当たる節があり、なんだか恥ずかしくなる。 「撮る側も、なんでも上手く撮れる訳じゃない」  石田はぼそりと言う。 「得意不得意はあるだろうけど、そういうのを減らさないと、プロにはなれないんじゃないの?」  石田はぐぬぬとでも言いたげな表情になった。意外と表情動く。  石田の部屋には結構いろいろな雑誌が置かれている。本人の趣味ではなくリサーチ用らしいので、男性誌も女性誌もある。ネット記事じゃ駄目らしい。本当に面倒な男だ。  男性誌を読んでみる。セックスのハウツー記事に、かつての恋人が攻めてきていた箇所と言葉攻めがそのまま載っていて、笑ってしまった。定番だったのか。彼は彼で、私を喜ばせようと、必死だったのかもしれない。  エロマンガ雑誌もある。こっちは石田の趣味だと思う。雰囲気よりも俗な男だ。パラパラ眺める。直截的なのにドリーム満載だ。絶対にありえないから、一周回って面白い。  石田の背中に向かって語りかける。
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