あなたは泣いてもいい

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「これ、言ったげようか。『おちんぽみるくちょうだーい』って」 「……いや、いい。実物に言われたら、たぶん萎える」  間があった。今度言ってみよう。ハートマークがついていそうな甘い声で。フェラも、そういうのはいいって言っていたのに、不意打ちでやったら、気に入られたし。面倒な男だ。ある意味チョロいけど。 「石田」  石田が振り向いたので、んーっと言いながらキスをする。色気も何もない。でも、心地いい。 「したくなっちゃった。しよ」  あわただしく服を脱ぎ、ベッドで身体を重ねる。放り投げた服は、ぐちゃぐちゃで無秩序。でもそんなことはどうだっていい。大事なのは私と石田の身体だけ。 「あ……石田、気持ちいい」 「そりゃ、ユリカと何回も、したし」  上手くなかったのも道理で。石田は私が初めてだった。最初は夢中すぎて、反応見るどころじゃなかったと言われた。  石田は少しずつ少しずつ私を探っていった。金脈を掘り進める鉱夫のように。私の顔を見て、息使いを聞いて、思わず震わせる身体を感じて。  行為の最中、石田はたくさんキスを落としてくる。あの日、全然しなかったのが嘘みたいに、何度も、何度も。唇だけじゃなく、身体中に。  私は石田とのセックスがとても好きだ。決定的な快感を得たことはないけれど、身体が解けていくようで、他のものでは得られない充足感を味わえて、いつも熟睡してしまう。
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