カノジョ自慢の話

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カノジョ自慢の話

 突然だけど、わたしの彼女はすごく綺麗な人だ。栗色の髪はいつでもサラサラで、瞳はまるで南の海みたいに透明で、覗いた先に果てなんてないみたい。ひんやりとした肌は侵しがたい雪原のように白くて、思わず目を奪われるほど。  あと、とっても物静か。うるさい人が苦手なわたしにぴったりだと思わない? 時々その静かさに寂しさを感じないわけじゃないけど、綺麗な顔で物静かで、わたしが何言っても、わたしに何があっても、ただ黙って傍にいてくれる彼女のことが、わたしは大好きだ。調子のいいことばかり言って、気が変わったら簡単に他人のことを捨てるようなやつと比べたら……ううん、比べること自体ありえないんだけど、あんなやつとは全然違う。  彼女みたいに無口だと、むしろ喋ったらどんな声なんだろう……って期待してしまう。惚れた弱み、なんて言われちゃうと何も返せないんだけど、だってそういうものだし!  だから、何があってもわたしは彼女が大好き。  大好き……なんだけど…………。 「ちょっと、(にお)ってきたなぁ~」  洗った彼女を抱えて、ドライヤーを当てている最中も、前より強くなってきた(にお)いが鼻を刺激してくる。  まぁ、もちろん?  わかってはいたよ?  首しかない彼女がいずれ腐るなんて、わかってた。わかってはいたけど、いざ現実に直面すると胸が苦しくなる。  わたしを救ってくれた彼女は、もうすぐわたしの前からいなくなっちゃうなんて……。そんなの、考えただけでも寂しくて。  だから、わたしは思い立った。 「ねぇねぇ、ふたりで旅行でも行かない?」  もちろん彼女は何も言わない。  でも、きっと彼女なら『清香(せいか)が行きたいなら、いいよ』って言ってくれるんじゃないかな? きっと、そうだと思う。  そうだよね?  まだ名前も知らない彼女の透明な瞳を、確認するようにじっと覗き込んだ。
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