走れ!メロン!

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「──さあ皆様、お待たせ致しました! 20☓☓年、ケイリン・ザ・グランプリ! 選手達の入場です!」 毎年12月30日に開催される、競輪界最大のレース。 それが「ケイリン・ザ・グランプリ」。 競輪場や場外車券売場には一年で最多の来場者が訪れ、車券はまさに飛ぶ様に売れる。 午後4時半から走り出す約3分間の大一番を、全国のファンがモニターの前であれこれ予想しながら今か今かと待っているのだ。 栄冠を競う9人は毎年、成績によって選出され、次のグランプリまでS級S班…… 略して「SS」の称号を与えられる。 専用の赤いレーサーパンツを履いているので「赤パン」とも呼ばれる。 ファンなら誰もが知る強豪や剛脚の持ち主であっても、とうとう一度も「SS」を名乗る事なく引退した者の方が多いのだ。グランプリの舞台に立つ事は全ての選手の夢、と言っていいだろう。 もちろん、ここまで来たらその先の夢…… 優勝を狙わない(おとこ)はいない。 今回、一人を除いては。 「6番車!熊本、竜崎飛龍(ひりゅう)ーー!」 初めてのグランプリに自転車(くるま)を進めた若き赤パン。 竜崎選手、25歳。 深呼吸をして一礼すると、満員の秋葉原競輪場(バンク)の大歓声が彼を迎えた。
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