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元々サッカー少年だった彼の才能は、自転車に出会って見事に花開いた。
若手らしく前へ前へと全力で逃げ切りを目指すパワー先行タイプ。
187センチの恵まれた体躯から繰り出される力強い走りはファンから「ドラゴンロケット」の愛称で呼ばれている。
「ドラゴ〜〜ン!頼むぞ〜!」
そして彼が出走するレースではどこでも、一際大きな声援が飛ぶ。
名前が覚えやすい事もある。
もちろん、強いからでもある。
だがそれ以上に、憎めない人柄故に彼は人気者である。
「いやその、あのですね、もう心臓バクバクばってん、と、とにかく頑張りましゅ!あっ」
現在競輪界最強の一人なのに。
ゴリラがじゃがいものコスプレをした様だ、等と言われる坊主頭のゴツい見た目なのに。
発走前のインタビューでは、大汗をかきながらカミカミになる。インタビュアーが女子アナなら尚更。デビューした時からずっとこうなのだ。
そして小さな大会であっても優勝出来たとなれば、その団栗眼はすぐに感極まって涙ぐんでしまう。
ちょっとこのじゃがいも応援してやろうかな、というファンが増えるのも無理はない。
さあ、全員が入場を終えた。
興奮と緊張が漲る秋葉原競輪場は一周400メートル。
通常のS級のレースは2025メートルだが、グランプリは2825メートル。バンクを7周する。
スタートラインに並んだ選手達は「発走機」と呼ばれる箱型の機械に後輪を突っ込んでロック、自転車に跨ってペダルと足をしっかりとベルトで固定する。
後は合図を待つだけだ。
さて、競輪を見るなら是非知っておかなければならない事がある。
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