ササヤカな声

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『はじめまして』 真っ白い眩しい光の中で 薄目を開けて声の主を探す。 ふと目が覚めた。 「夢か…。ってもう七時か。やべっ!」 敷いた布団の上で慌てて着替える。 白い長袖Tシャツにデニムパンツ。 二十五歳のサラリーマンにしては カジュアルな服装で通勤電車に乗る。 都市部とは逆方向に進む電車は空いていて 座って居眠りをすること三十分。 右も左も畑の広がる道を歩いた先に 小さな町工場が集まっている。 まだ新しめの建物に駆け込んで 薄い緑色のブルゾンを羽織って ラジオ体操をしている輪に加わった。 「小池、遅刻だぞ」 「すみません、工場長。でも、体操中ですし」 「体操も業務の一貫だ」 「走ってきたので皆と同じく運動はしてます」 「まったくお前は…(笑)」 工場長が笑うと 周りも声を上げて笑い出した。
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