ササヤカな声

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『また会えたね』 真っ白い眩しい光の中で 薄目を開けて声の主を探す。 ふと目が覚めた。 「夢か…。ってまだ七時か」 たまには早めに出社するか。 一番乗りかと思いきや 工場長の他に若い女性が一人 事務所に座っていた。 「小池、早いな」 「おはようございます。工場長」 「こちらはお前のチームに入る新人さん」 紹介されて軽く会釈をした。 「チーム長の小池です」 「井戸サラです。よろしくお願いします」 今度は深くお辞儀した。 顔を上げたサラと目が合うと その瞳が大きく見開いた。 工場長が「機械見てくる」と席を外して 二人きりになった時 「きょうさん……?です、よね??」 「恭さん?」 「私、ほら、北海道でスマホ落として…」 サラが頬を赤らめながら言う姿に 過去の過ちを思い出す。 「ええっと」 まさか。 「朝、ね、色々したじゃないですか」 心臓が凍り付いた。 「ひ、人違いでは?」 「いいえ。これ、覚えてますよね?」 サラは胸元からネックレスを出して 通してある指輪を見せた。 俺が作った世界に一つだけの夏椿のリング。 「あの時は……、ごめん」 観念して謝った。 「いいんです。また会えるなんて…!」 急に抱きついて来たサラが名札をなぞる。 「恭介さん、だったんですね」 指先の動きに映像がフラッシュバックして 心臓が跳ね上がる。 再会してから毎日一緒にいて 俺はあっという間にサラの魅力に 取りつかれてしまった。
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