ササヤカな声

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「ごめん。帰って」 妊娠中は情緒不安定になることも 今が悪阻のピークだということも ネットで見て知ってはいるが 何も出来ず当たられるのは辛い。 どうせ入れてもらえないしな。 会いに行くのが億劫になったし 連絡してもスルーされてばかりで した方がいいのか、しない方がいいのか わからなくなった。 『何か俺に出来ることがあったら連絡して』 それを最後に自分からは アクションすることをやめた。 放っておかなけれぱ良かったと 激しく後悔してる。 ようやく連絡が来たのは 一週間以上経ってからだった。 「どうしよう、恭ちゃん…」 電話越しの声が震えている。 「彩芽、今どこ?」 「……病院」 慌てて飛んで行くと  ベッドの上に泣き腫らした顔の彩芽が  病院のパジャマを着て座っていた。 「大丈夫か?」 「流産しちゃった…」 ポツリと呟いた彩芽に 掛ける言葉が見つからず うなだれるしかなかった。 「私のせいだよね」 「えっ」 「私が育てる自信がないって言ったから…っ!」 「彩芽のせいじゃないよ」 泣きじゃくる彩芽を抱きしめる。 「私たちの、赤ちゃん、いなくなっちゃった」 その言葉に胸がえぐられて 俺も泣いた。
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