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「ねぇ、ちょっと。さっきからヒドイな。危害は加えないけど実害は与えられるんだからな?
そこんとこ忘れないほうが身のためだ。」
おっと、喋り方と顔つきが変わった。
これはマジで怒らせたやつかもしれない。
「………生鬼はいいの?好きでもない女と結婚して。」
少しでも気をそらそうと話を振った。
「別に?そもそも一目惚れしなけりゃ契約もしねぇよ。」
サラッと言ったけど…。
一目惚れなの?
そんなこと今まで一度だって誰かに言われたことはない。
その言葉に今更顔が熱くなる。
「ふ、ふーん、あっそう。」
何てことないように言ったけど、誤魔化せただろうか。
「…ちょっと。何しようとしてんのよ?」
私の閉じた襟元に手をかけ顔を近づけてくる生鬼に冷たく言い放つ。
「何って続き?イかされて華さんを貰いそこねたし。」
しれっと続けようとする生鬼。
「ま、待って!」
ダメダメ。このままじゃなし崩しよ。
口を塞いで押し返した。
「待たない。」
手を剥がし、そう言ってまたも顔をアザに近づけようとする。
「だーかーらー “ 待て ” ってば!」
犬に待てと言うようで何かアレだけど、命令は効いたらしい。
生鬼が固まる。
「今日はもう終わりよ。こんなことしてる場合じゃないの!仕事しなくちゃ!」
「父さんなら気を利かせて出てったろうし、今日はそのつもりだから大丈夫だって。
それにそんな格好で家の中をうろつくするつもり?まぁそれもいいけど…。」
そのつもりとは何だ、そのつもりとは…。
やっぱり親子でグルだったのね。
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