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「いよいよ今日だ。」
人類の悲願である人工降雨機。雲を意図的に冷却し、雲の中の水分を固める。そして、雨としてその水分を地上に落とすのだ。
人工降雨機が雲を冷やす原理は冷蔵庫がものを冷やす原理と似たようなである。
ちなみに、人工降雨機の見た目も鉄色の冷蔵庫である。
普通の冷蔵庫と違うのは、人工降雨機はマンションの2階ほどの高さがあること、冷気が放出される扉部分が空に向かってついていることである。
ラボが開発した人工降雨機が今日初始動する。
2125年の夏、国連は急激すぎる地球温暖化の進行を危惧し、先進国にそれぞれラボを設置した。
ラボの種類は大まかに、残された水の使い方を研究するラボ、水をどうやって節約するか研究するラボ、水を増やすためのラボに分類される。
ラボの日本支部は水を増やすためのラボ。
人工降雨機の開発を目的に設置されたのだ。
そのラボの最高責任者である俺……ショウヤと降雨機開発リーダーのハルトは、人工降雨機が設置されているラボの屋上にいた。
「じゃあハルト、人工降雨機のスイッチを入れてくれるか?」
「……僕でいいの?」
「もちろん。人工降雨機の作成に一番貢献したのはお前だしな。まあ、お前にあれこれ質問しまくったのは俺で、お前はその度に嫌な顔してたけど。それでもお前が押せ。」
「…………わかった。」
緊張からか、ハルトの声は小さい。
ハルトは人工降雨機に被せてあったブルーシートをはがし、屋上の地面にポンっとおいた。
そして、目の前に現れた赤くて丸い、小さな起動スイッチを押した。
人工降雨機が起動して1分ほどで雨が降る計算だ。
俺はその時を祈るように、初めて買った折り畳み傘をさした。
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