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…………だめなのか。人工降雨機が起動して5分。雨が降ると確信してさしていた折り畳み傘を閉じた。
「ショウヤ、やっぱり無理だったのかな。」
「…………。」
ハルトの声に答えられなかった。
俺はあきらめきれなくて、閉じた傘を雑に捨ててふらふら人工降雨機に近づいた。
悲しみからか絶望からか最後の希望をかけてか、覚束ない足取りで人工降雨機の前に着くと、俺は右の手のひらを顔の前に掲げた
どうか雨が降りますように、と。
そのときだった。
「あ」
手のひらに、水が、あった。
それを認識したと同時に、頭の上、鼻の先、肩……自身の体に雨が降り注がれているのを感じた。
雨だ…………。
「やったなハルト!!!」
これでみんな水に困らない!!
ハルトの顔を見ようと左を向くと
そこには誰もいなかった。
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