出会い

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 その実行委員が来たのは、3日後だった。  ソファなどが置かれたフロアで、ぼんやりと音源を探していると、不意に肩を叩かれる。  顔を上げると、顔立ちの整った女性がいる。職員が首から下げる名札をつけていないところを見ると、この学校の生徒だろうか。  「あ、もしかして、学校祭ステージの実行委員の方? 俺は……」  サッと手で遮られ、口を閉じる。訝しげに見つめていると、女子生徒が手を動かしながら、小さな声で話し始めた。  「私は、難聴で、殆ど聞こえません。手話か筆談で、お願いします。」  呆然と相手の顔を見てから、慌てて懐にあるメモを出す。走り書きで書いてから、相手に見せた。  『実行委員の方ですか?』  頷いた相手は、また手を動かしながら、小さな声で続ける。  「竹瀬(たけせ)詩穂(しほ)と、言います。萩永(はぎなが)彩仁(あやひと)さんですか?」  頷いた。ホッとした顔になった詩穂が横に座り、参加者用の書類を見せてくる。  「そういえば、何を演奏するの?」  不意に向けられた質問に、思わず俯き、曲は決めていないが有名ソングのカバーを、と答える。  もう音楽をやっていける自信が無い、もうやめるからこれが最後の……そこまで書いた時、サッと持っていたメモ帳を取り上げられる。  慌てて取り返そうとした時、怒ったような顔の詩穂がこちらに向き直った。  「何でそんなこと言うの? カッコいいって思って、歌手を目指したんじゃないの?」  何も言えず、呆然と見つめていると、こちらに押し付けるようにメモ帳を返した詩穂は、何も言わずに立ち去ってしまった。    あとには、身動きも忘れた自分だけが、取り残されていた。
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