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「みっちゃん、その……い、一緒に……その、ならないか?」
「え?」
いつも会っていた川辺に彼岸花が咲き誇っていた季節。周りの花に負けないくらい真っ赤になった幼馴染の昭夫さんが、しどろもどろに言った言葉を思わず聞き返してしまった私。
「だから!! 僕と一緒に……」
「…………あ」
やっと意味を理解して、恥ずかしさで顔がぼっと熱くなる。
「……は、はい……あの、不束者ですが……」
茹でだこのように赤くなって俯いている私達を、祝福してくれているかのように、風に吹かれた彼岸花はさわさわと揺れていた。
戦争中の今。食べていくのも精一杯のこのご時世。
祝言など挙げられる余裕などはない。モンペ姿の花嫁に、父がなんとか手に入れてくれた少しのお酒で盃を交わす。とても質素な祝言だった。
それでも、この暗い世の中で大好きな人のお嫁さんになれる私は幸せだと思っていた。
3日後、赤紙が届くまでは。
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