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小さい頃、麦わら帽子をかぶって、その頃やっていたアニメのプリントの入ったTシャツを着て、駆けずり回っていた。
ひまわり畑は当時の私よりも身長が高くて、「まーこ? まーこ?」とお父さんとお母さんが探し回っているのを、私は面白がって隠れて見ていた。
そんなかくれんぼうをしている中。ふと拓けた場所を見た。
真っ白なワンピースをはためかせ、麦わら帽子を被っている女の子が、ぼんやりと立っていたのだ。私を見た途端に、気恥ずかしそうな顔をした。
「……なに?」
「ううん。ひとり?」
「遊んでただけだよ。お姉ちゃんがいやだったから逃げてきたの」
「じぶんと一緒だねえ。じぶんは、お父さんとお母さんとかくれんぼしてるの!」
「……そう」
見知らぬ子だったけれど、髪が長くて風が吹くたびにそよいできらめいているのを眺めていた。私はその子に「今、セミ取りしてるの! 一緒に取らない!?」となんでそんな誘い方してるんだというお誘いをした。
私たちは、ひまわり畑でセミ取りに興じるという、大変おかしな遊びをしていた。
水筒の麦茶は空っぽになり、そろそろお父さんとお母さんが泣き出す頃だから、帰らないといけないと思った中。
「そういえば、ひまわりの種いる?」
遊んでいた子に尋ねられて、私はパチパチ目を瞬かせた。
「くれるの?」
「うん」
「ありがとう!」
その子ははにかんでいた。私は彼女にニカリと笑っていた。
今思っても現実味のない光景だった。
私はアニメTシャツにキュロットで駆けずり回っている中、白いワンピースに麦わら帽子の髪の長い女の子がひまわり畑に佇むのは、情緒があり過ぎる。
その子からひまわりの種をもらい、来年覚えていたら育ててみようと思い立った。
間違いなくその可愛い子が初恋だったのだけれど、あの子はいったい誰だったのかは、なんにも覚えていない。
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