① コインランドリー

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① コインランドリー

 ガコン、ガコン、ガコン。  夜更けのコインランドリーで、乾燥機がまるでコンクリートミキサーのような音を立てて回っている。  ぼくは乾燥機の中で回転している自分の洗濯物を、向かいの丸椅子に腰を下ろしてぼんやりと見つめていた。Tシャツ、パンツ、カットソー。靴下。  ガコン、ガコン。  ずっと見つめていると、洗濯物が回っているのか、乾燥機の窓を軸に自分が回転しているのか、分からなくなってくる。それほど、ぼくは落ち込んでいた。いっそこのまま、この遠心力でどこかに飛んでいってしまえないかと、ぼくは考える。そう、彼女の元まで。  ぼくの太陽。  人は太陽が無いと生きていけない。植物だって生きていけない。万物を生かし、育み、エネルギーを与えるのが太陽だ。ぼくの太陽はあの日突然、ぼくの前に現れた。そして単調で何の面白みもなく暗かったぼくの人生を、不意に明るく照らし出した。それは不測の事態だった。
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