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正直、首相の長話の意図が見えなかった。
大体、俺今アカデミーの国民なんだぜ?
まさか、セントラルの首相閣下が、蜜月とは言え他国の官吏に何を求めるというのか。
ただ、あれやっぱそうなのか?
ビスキーの奴。
ビスキーは、親父が、お袋が死んだあと、連れてきた貴族女の子供で、異母弟に当たる奴だった。
どうにも、あいつとはそりが合わなかった。
結局、グレたタルカスは、着の身着のまま家を追い出され、アカデミーで食い詰め生活を送っていた。
まあ、ジョナサンの奴と知り合って、ドラマーとしてそこそこ飯は食えてたがよ。
結局、どうにもならなくなって、アカデミーを中退し、王都で何とか食い扶持を稼ごうとしていた。
仕事4つくらいクビになって、イモ焼き屋の屋台を曳こうとしたところ、クソ生意気そうな王女に声をかけられて、王立捜査官の訓練合宿に放り込まれた。
飯食えりゃあ何だってしてやらあ。
ハッキリ言って、訓練合宿も、どっかの犬との自主練の方が遙かに厳しかった。
八つ当たり気味に、フランチェスカにぶん殴られるようなこともねえし。
捜査官のバッジを与えられた頃、もう、ビスキーが何をしているのかも、もう思い出すこともなくなっていた。
田舎子爵の小倅が、何企んでやがるんだ?
しかも、ジョナサンの愛人の縦ロール襲った?もうほぼ死亡確定だぞ?
家に帰ると、シリルの眩しい裸体が見えた。
ジョナサンの奴がニャンニャンちゃんと昔、校長相手に。そう呼んでいた部分が。部分が。
ベッドでしこたまハメまくっていた。
起きると、シリルの姿がなかった。
あん?犬から着信?気付かなかったな。
ショートメールには、大体首相から聞いた通りのことが書かれていた。
まさか、シリルが?
だが、何故今更俺を?俺の女?を?
ここに来て、急にタルカス・シーボルト元捜査官の、魂が刺激されていた。
じゃあ、動いてやろうじゃねえか。
これから、タルカスの、孤独な戦いが始まった。
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