共闘元捜査官

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共闘元捜査官

 シリルの奴、どこ消えたんだ?  調べたが、部屋にはそういった、失踪を暗示するような情報は何1つなかった。  この穴開きパンツが気に入らなかったのか?そんな訳ねえだろう。  状況が物語る結論は1つ。  タルカスは、知っていそうな人物に会いに行った。  馬鹿デケえな。相変わらず。  初夏の陽気に、タルカスは目を細めていた。  陽光を反射して輝く、リトバール元伯爵邸。  アポなしで行って相手をされるとは思わなかったが、望んだ人物は自宅にいたようだった。  ん?ああ婿殿のご友人だねえ?  現運輸相は、のほほんとしていた。  水槽のカエルを飼っているようで、時々とても臭かった。 「うん。友達の友達はみんな友達だねえ?我が友達のレスターを知っているかね?」 「うちの王様の親父さんなら、まあ」  うん!そうなのだよ?!嬉しそうにエンポリオ・リトバール卿は言った。 「君、プーフロッグってカエルを知っているかね?」 「うちの王様の野郎が、生徒時代にプラチナの連中の机に仕掛けてましたぜ?」  阿鼻叫喚の地獄絵図と化した思い出があった。  尻で踏んづけたドルイット・マクベスなんか、1週間くらい臭かった。 「でもまあ、この子は結構素朴なカエルなんだよ?誰か?!客人にお茶を」  フットマンが、顔をしかめながら茶を振る舞って逃げていった。 「ところで、こないだ、ビスキーの奴に会ったそうで」 「うん?ああそれは、我が愛しのアリエールとロズウェルではなかろうか?ちょっと待ちたまえよ?」  携帯で娘を呼び出していた。  本当に臭いですわここ。  呼び出されたアリエール・リトバール・エルネストは、何故か不機嫌だった。  相変わらず、お嬢様でいらっしゃるようだ。  タルカスとアリエールは既知があった。  確か、ユリアスの後継者事件の時に。犬と一緒にいやがった。  あとは、金色のユリアス(スライム)事件で一緒に馬鹿(ジョナサン)焼いたんだった。 「お父様、いくら旧知のタルカスでも、まさかここに招かなくても」  そりゃあ悪うござんした。 「まあ、私の家族をきちんと紹介したかったのだよ?」 「ああ、なら一応、こないだ劇場一個ぶっ壊した人間にも紹介してくんねえかな?」  誰がやったか不明だが、派手な壊され方で大体見当は付いた。 「お母様なら、論文の刑が終わって、別の劇場に観劇中ですわよ?」  まあ基本、1日座学で、2日目はその座学を下敷きにした論文作製の刑ってのが常だった。  やっぱそうかよ。  そりゃあ豪儀なこって。 「それよりも、何のご用ですの?」 「ああ、ビスキーの奴のことをよ?」 「ご自分の弟でしょう?兄としてキッチリ管理してくださいまし。結構痛かったんですのよ?ロズウェルだけはと思ったんですのよ?」 「そいつはホントに済まねえ。でもよ?あんな野郎は知らねえって。親父が死んだことすらよ」  辛うじて、リトバール運輸の空便が来ただけだった。 「それでな?意見が知りてえ。俺の(かのじ)――いや、シリルが消えた。何か聞いてねえか?」 「はえ?ファルコーニ女史ですわね?ああ、それだと」 「まあ、クレアのことは迷惑かけたな?だがよ、クレアとシリルは関係ねえ。女王の嬢ちゃんは、身内に危険人物擁する訳がねえ」 「あー、それで、彼女は、彼女の家にいたのだね?つまり、南西の尖塔の中階に」  突然、大臣が言った。 「ああ。だから」  いきなり消えるのはおかしい。そう言おうとしたが、アリエールが突然割って入った。 「マリアベルですわね?ビスキーと一緒にいた、転移魔法の使い手ですわ」  何?! 「おい!そりゃあホントか?!だったら、いきなりシリルが消えた理由も」  ふーん。そうですの。  立ち上がったアリエールに、威厳が見えていた。  流石、ジョナサンをして天才と呼んだ愛人の仕草だった。 「マリアベルは、恐らく院にいた女ですわ。アカデミーじゃありませんもの。恐らく、先生、うちの主人と同年代ですわ」 「済まねえ。恩に着らあ。ちょいと、院に行ってみるか」 「(わたくし)もご一緒しますわ」 「いいのかい?ジョナサンは」  きいいいいいいい!いきなり吠えたんでタルカスはたまげた。 「先生に危機が迫ってますの!嬉しドキドキ子作りタイムにいきなり乱入して、(わたくし)の主人を拐ったマリルカも、フランチェスカも許しませんわ!」  ああ悪い。そりゃあ俺の関知の外だよ。  あいつ、死んでねえのかな? 「行きますわよ!タルカス!(わたくし)のエスコートをよろしく頼みますわ!」  いいのか?この欲求不満連れてって。  とりあえず、父親に目を向けた。  やれやれって顔をしていた。  シリルを探して、妙な同行人を見付けてしまった。  どうすりゃあよ。  タルカスは困っていた。
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