初恋は女の子でした。【GL】

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初恋は女の子でした。【GL】

『アキ、今日カフェでも寄って行かない?』 長い髪を揺らしながら貴女は笑顔で駆け寄ってくる。 私はそんな彼女の笑顔が堪らなく好きだ、これは恋愛感情? 他人を好きになった事がない私は恋愛がわからない。 ただ、彼女の笑顔を見ると心臓が跳ね上がる…ドキドキと安心感が入り混じる。 『ごめんカエ、今日バイトなんだ。高校生のバイトなんてすぐに切られるから真面目にって言われてて…』 『誰がそんな事言ったの?』 『お母さん』 カエは小さく笑って首を振った。 『大丈夫だよ、一日くらい仮病使っちゃえ』 『え?仮病?』 『そ、ほら、無断は流石に駄目だから連絡して?私静かにしてるから』 カエの瞳は本気の色をしていた。 私は迷ったがカエの誘いが嬉しくて携帯を手に取りベランダに出た。カエは不思議そうにするも電話をしようとする私を満足気に見ながら待っていた。私は仮病は思い付かなかったので部活として休みを取った。思ったより意外と簡単に休めたので拍子抜け。 『カエ、休めたよ。何処のカフェ行く?』 『…うーん、海が見えるとこ!』 『海?』 『そ、海!』 『バスあったかなぁ…』 『あるある!行こ!』 『ちょ、待ってよ!』 走り出すカエに慌てて鞄を持ってついて行った。海の見えるカフェって…なんかデートみたい。私は知らないうちに微笑みを浮かべていた。やっぱり私はカエが好きなのだろう。同性なのに…。 『…アキ、やっぱりうちに来ない?』 学校を出るとカエは突然元気がなくなり私の手を取って黙って歩いていたら、不意にこちらを見て尋ねてきた。 『いいけど…どうしたの?』 『…いいから、来て欲しいの』 『わかった、行くよ』 私達は黙々とカエの家まで歩いた。家に着くとカエは鞄から鍵を出して扉を開けた。…あれ?おばさん居ないのかな?無意識に思ったが、敢えて口には出さなかった疑問。 『ごめん、散らかってるけどあがって?何か飲むでしょ?』 『大丈夫だよ、うーん…コ』 『ココア!でしょ?』 『う、うん』 『何でわかったかって顔してる〜…そりゃね、好きな人の好きな飲み物くらい知ってるよ』 『え?』 『気持ち悪いって…思った…?』 『いや、そうじゃなくて』 『そうじゃなくて?』 『そんな顔してた?』 『え?ぷっ…あはは!してたしてた!てか、そこ??好きな人ってとこじゃないの?』 『あ、そうか…そうだよね、なんか…同じなんだなって思ったら気になんなくて』 私が笑いながら言うとカエは驚いたような顔で私を見てきた。今度は私が小さく笑い… 『なんて顔してるの?』 と顔に手を添えた。 カエはそのまま静かに涙を零して微笑む。その顔がとても綺麗で愛おしくなった。 『…うちね、両親とも不倫してたんだ。でも、子供、つまり私ね?私が居るからせめて成人するまで我慢して夫婦してたんだって…偶然聞こえて…私キレちゃった』 『…それでおばさん居ないの?』 『うん、二人に出てけって泣き喚いたら二人とも出て行ったよ。口座に二人から必要なだけのお金が入れられる予定。私はこれから一人で生きてくの』 『カエまだ高校生だよ?大丈夫なの?女の子だよ?危なくないの?』 『うーん…なんとかなるよ。幸せになれないのを私の所為にされる方が嫌だし、正直不倫してる両親なんて気持ち悪い』 カエはやっぱり寂しいのだろう、遠くを見て寂しそうに笑ってから蹲るように座り込んだ。私はそんなカエを抱き締める。 『カエ…痩せた?』 『アキのが痩せてるじゃん』 『貧乳なだけですけど?』 『何その冗談』 『あ、笑った』 『だって胸の話なんてしてなかったのにさ〜何気にコンプレックス?』 『うるさい』 静かな部屋に二人の小さな笑い声が響いた。カエは私を見て暫く考えているように見詰めてから口を開いた。 『アキ、ここで暮らさない?』 『え?』 『私犯罪者になってもいいんだ…アキを監禁したい…』 『笑えない冗談言わなっ』 『冗談じゃない!アキも私を好きならしてもいいでしょ?他なんて見ないで私だけを見て、私だけの世界に居て?』 カエは両親の不倫で心が壊れていたようだった。誰かを永遠に愛するとか裏切りのない愛とか無償の愛とか信じるとか自分以外を全く信用出来なくなったのだろう。自分の世界に置いておかないと不安になるのだろう。狂気にも似た視線は私を貫き身動きが取れない。 『…アキ、大事にするから…ダメ…?』 『私、帰らないと…』 『…そうだよね…アキには心配してくれる家族が居るもんね。私なんかのとこに居られないよね』 カエの不自然な程の笑顔と物分りの良さに違和感しかなかったが、どうする事も私には出来なかった。思い付かなかった。 その後、カエが淹れてくれたココアを飲み不自然だけど自然な会話をして笑い合って私は家に帰った。 携帯が鳴る。 【アキ、ありがとう】 その一文だけ。私もお礼を返した。明日学校でカエに会ったら出来るだけカエの傍に居てカエだけを見ていようと決めて。これから先カエが独りで寂しくないように…と。 次の日学校に行くと担任が凄い勢いで私に近付いてきた。 『お、おはよう御座います』 『大事な話がある、校長室に来なさい』 私は何がなんだかわからず慌てて靴を脱いで上履きを履き校長室に向かった。そこに居たのはカエの両親と校長先生と教頭先生と一緒に来た担任の先生だった。 話の内容なんてもう覚えていない。 カエが自殺した。 最後に会っていた私に話を聞きたかった大人達に私は何も言えなかった。 カエは何故命を絶った? 私があの時に帰らず監禁されていたら良かった? 私が連絡が来た時に察していられたら良かった? なんにせよ、カエが死んだのは自分の所為なのは間違いないと思った。私がカエの壊れた心にとどめを刺したのだ。 カエの不自然な程の自然さに甘えた結果だ。 『ねぇ、カエ?何で私を置いて行くの?』 『アキが私を拒んだんだよ』 『…そっか、それなら今度は拒まないから…行くからね?』 『私が拒んだら?』 『カエは拒まないよ。可哀想な私を拒んだりしないでしょ?』 『何それ…うん、じゃ、おいで』 私の最初で最期の恋愛は女の子でした。 一瞬にして終わった恋愛でした。 それでも、私は後悔していないし、幸せでした。 【カエ、ありがとう】
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