4/8
前へ
/8ページ
次へ
 目の前を黒い影のような猫が通る。そいつはこちらを見やり、したり顔で笑ったように見えた。  不穏だった。猫は僅かな摩擦音だけを立てて生け垣を囲う石段の上に飛び乗り、再びこちらを見る。今度は観察を心に決めた様子だった。僕は意識的に猫から視線を外し、再び道の先へと向かっていく。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加