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 ただ真っ直ぐに続く帰路の途中、錆びついた赤いポストから生えるようにして道が現れた。それはずっと昔からあったようにも、たった今しがた生まれたようにも思える。少なくとも僕の記憶には全く存在しない道だった。  道を真っ直ぐに進むと壁に突き当たり、さらにそこから右方向へと進む道があるように見える。僕は通学鞄の重さとその道に対する好奇心を天秤にかけ、その度に結局帰宅を選んでいた。  しかし、その道に対する関心は次第に膨れ上がり、ちょうど今日になって僕の足をその道へと向かわせたのだった。  すっかり見慣れたその道は、最早どんな道よりも僕にとって既知のものと化していた。改めて地面のコンクリートを観察しても、いつもの通学路と同じように元々存在していた道のようであった。  通り過ぎる人々は、その道など見えていないかのようにただ歩いて去っていく。
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