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エピソード1《学校一関わってはいけない危険人物》
赤、白、紺の色をした薄いマウンテンパーカーを学ランの上に羽織ってから、いつも学校へと向かう。
行く時間は決まって昼の十二時。どう考えても学校に行くには遅い時間だ。でも、それにはちゃんとした理由がある。
――彼、泰田玲孳は危険人物であった。
***
四時間目のチャイムが学校中に鳴り響くと、お昼のお弁当の時間に入った。
学校にいる生徒の皆は、賑やかに会話をしながら、それぞれ違う場所で昼の休みを満喫している。
それはこのクラス、一年五組も例外ではない。楽しそうに会話を弾めながら、美味しそうにお弁当を頬張っている様子。
当然、全員が揃って食べているわけではなく、他の人は違うグループで、別の場所に行っている。が、ここに残っている生徒たちも少ないわけではない。
彼たちも教室でグループに固まり、別の席へと移動したりして、各々が楽しくやっている。そんな中、突然と閉まっていた教室前の扉が開く。ガラガラという軽い音と共に。
さっきまで賑やかで平穏な雰囲気が流れていた教室が、一気に冷めた雰囲気へと変盆した。
それは、扉の前にはある一人の男が立っていたからである。教室にいる皆は彼を見ながら、辛辣な視線を送った。ひそひそと会話を始める。
「ねぇ、アイツまたこの時間に来たよ。」
「やっべぇ!」
ニヤニヤと笑みを浮かべながらカップルが言っていると、その間に割って入るかのように、一人の女子生徒が嫌悪な顔でそのカップルに密かにこう注意をした。
「ちょっとやめなよ! 彼、人殺しらしいわよ!」
「え! マジで!?」
「まあ、“学校一関わってはいけない危険人物”って呼ばれるぐらいだもんな……」
そして、そんな会話を無視しながら、“学校一関わってはいけない危険人物”と呼ばれている男は、自分の席へと向かい始めた。
それを追うように見る生徒たち。そのまま男は堂々と席に座りつく。
でも、男が座っても教室は静まり返るわけではなかった。まだ、そわそわとした様子が続いている。
これは彼が危険人物と皆に思われているからだろうが、実は違った。この噂は完全なるフェイクだったのだ。
――彼、泰田玲孳は危険人物ではなく、皆と変わらない、普通の人物であった。
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