第2話 駄々っ子を好きになってしまった

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第2話 駄々っ子を好きになってしまった

 私は、どんなに暴れたとしても、勝てない男の人の力によって、密室の空間に閉じ込められた上に、鎖で手足を拘束された。 「いきなり、何をするの?」 「それは、こちらの台詞でもあるよ、ブライド。 自分勝手で、駄々っ子がいつまでも抜けないお嬢様」 「よくわからないけどさ、この拘束を解いてくれない?」 「うーん、僕が好きって言ってくれるようになったら、解いてあげてもいいけど?」 「私と君は、もう終わった関係なの」 「そっか、って納得すると思う? 僕は、君を諦めていない。 諦めきれない。 そのくらいに、好きなんだ」  グルームとは、ただの幼馴染で、なんでもない元カレだと思っていたから、彼がそこまで本気だとは思わなかった。 「好きって、言ってほしいの?」 「何のために、閉じ込めたと思っているの?」 「私を花嫁にしたいくらい?」 「婚約したのに?」 「本気で、ほーんきで、私を好きなら、花嫁にして? 女の幸せは、お嫁さんになることなんだから」 「君の理論はよくわからないけど、まあいいよ。 君が望むように、花嫁にしてあげる。 最高で、世界一幸せな花嫁にしたげる。 だから、飽きたとか、ぜーったいに口にするなよ」 「しない。 しないと思う。 ううん、絶対にしない。 多分、しない」 「どっちなのか、はっきりしてくれない?」  私は、閉じ込められてしまったけれど、そんなことはいいの。  どんな手段でも、幸せを勝ち取りたかった。  家にいても、母親はどうせ、私のことを気にかけてくれないことはわかっていたから、ここで、幼馴染とでもいいから、ここから出たくないってくらい、幸せを過ごしたい。 「私のこと、好き?」  私は、愛を確認したかった。  この言葉がなくなったら、私はどこかに消えてしまいそうだ。 「好き」 「どのくらい?」 「好きだけで、満足しないのか?」 「しない。 もーっと、愛して? 言葉で、表現してくれないとわかんない」 「世界で、一番好きだ」 「ほんとに?」 「信じられない?」 「信じたいから、聞いているの」 「やっぱ、僕は君が理解できないや。 言葉で伝えなくても、態度や行動だけで、愛されているってならないのかな?」 「ならない。 愛が本物かどうかなんて、確かめてみないと。 勝手な思い込みだけで、決めつけたくないから」  私は、母親と同じような人生を歩まないって、決めたから。  母親がやらなかったようなことを、こうしてやっている。  母親が父親にしたようなことは、ぜーったいにしないの。  愛情確認なんて、私は何回でもする。 「君は、摩訶不思議なお嬢様だ」  グルームは、そう囁いた。
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