第5話 精神年生が12歳で止まってしまった場合

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第5話 精神年生が12歳で止まってしまった場合

 私は、気が付けばグルームのことを好きになっていて、彼と一生を過ごしたいと思うようになっていた。  彼のことが大好きだから。    だけど、私は今の外の世界がどうなっているとかは知らない。  ずっと、同じ部屋で過ごしているから。    今日は、上は白のレース付きの服と、下はデニムキュロット。  腰までの長い水色の髪は、どんなヘアーアレンジもできそうだけど、基本はベッドの上でしか過ごせないから、三つ編みか、髪をおろしたままにしていることが多い。    グルームはよく私のためにビキニを用意してくるけど、こんな真っ赤なビキニをどうして持ってくるのかいまだにわからない。 「ビキニ着られるような年齢になったろ?」 「なってても、サイズが合わないって」 「この年になっても、まだビキニが着られる体型にならないとか、どういうことだ?」 「言葉をオブラートに包んでよ。 しょうがないじゃない。 いつまでたっても、成長しないものはしないんだから」  私は、いまだに幼児体型だった。  身長はやっと150センチにたどり着くようになったけれど、ビキニのサイズは最低でもAカップないと入らない。  だけど、それよりもない私は着られないということになる。  大きくならないものは、仕方がない。  ビキニが着られなくても、すでに花婿候補が決まっているんだから、問題はない。   「小学生みたいだな」 「精神はもしかしたら小学生かもしれないけど、これでもれっきとした大人だよ。 グルームとしか一緒に過ごせる人いなかったし、世の中にはどうしようもできないことだってあるの。 これで気がすんだなら、ビキニなんて派手な女性しか着られないような物は持ってこないでよね」  監禁生活を送ってきたから、私の精神は12歳のままで止まっているような気がするのは、自分でも自覚していたけれど、グルームと二人でしか過ごせない状況の中で、どうやって成長するのかとはわかりようがない。 「顔は美人だけど、性格がなあ」 「この私を選んだのは、間違いなくグルーム。 どこでもない、誰でもないグルーム」 「僕は、ブライドが好き。 これは、紛れもない事実。 だけど、この自己主張の強いところは、控えることとかできないのかな?」 「私は、この部屋に来て以来、部屋から出たい願い事以外は何でも叶った。 だから、これからもどんなわがままを叶えることも、君の役目じゃなくて?」 「どうやら、僕は相手を間違えたみたいだ・・・」 「どういうこと?」 「つまり、こういうこと」  グルームは、どこからか小さく尖ったナイフを持ち出してきた。
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