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いつもの交差点
時刻は深夜0時30分。
コンビニの青白い明りを背に受け薫は交差点の信号が変わるのを待っている。
いや、まだ変わらないで欲しいという気持ちの方が強い。
周りには誰もいない。
もう一度コンビニに寄ろうかな。
そんな思考が頭をよぎった刹那、交差点を挟んで反対側に黒い人影が近づいて来るのを視界にとらえた。
信号が青に変わり、横断歩道を進む。
反対側からは黒のジャージの上下にウェストバック、ウォーキングシューズにタオルを首に巻いた恰幅のよい男が近づいてくる。
初めてすれ違ったのは半年くらい前だった。
どうやら男は深夜のウォーキングを日課にしているらしく、薫が最近この時間に帰宅するようになってから、この交差点で頻繁にすれ違うようになった。
男はいつも通りのリズムを刻みながら、交差点の中ほどで薫と何事もなくすれ違う。
次に会ったときこそ声をかけようと、前回すれ違ったときに誓ったのに、
今日も勇気が出ずにそのまま信号を渡り切り、ため息をつく。
そしてまた、次こそはと心に決める。
何度繰り返すのであろうか・・・。
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