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正門横の壁に軽く身を預け、スマホの画面を見る。
そろそろ、黒ジャージの男が通ってもよい時間だ。
深く息を吸い、そしてゆっくり吐く。
かなり緊張しているのが自分でもわかる。
こんなんで果たして声をかけることができるのであろうか。
リラックス、リラックス。
弱気じゃなくて勇気!
集中力を高め気合を入れなおし、南側の道に意識を向け続ける。
まだ来ない・・・。
ちょっと遅れてるのかな?
スマホで時間をもう一度確認したとき、もたれていた壁のすぐ際にある通用口が勢いよく開いて人が飛び出してきた。
「 わっ!」
驚きでしりもちをついてしまった薫。
「 ごめんなさい。急いでいたので。」
と、謝りながら転倒した薫に手を差し出してきた男。
「 あっ!」
今度はその男の口から驚きの声が漏れた。
差し出された男の手を取り、顔を上げた薫は息を飲み絶句した。
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