僧侶は言う。

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僧侶は言う。

 取り敢えず自己紹介をしましょうか。  先ずは共通点を探しましょう。  僧侶が音頭を取る。 「先ずは言い出しっぺの私からですね」  その声は鈴の如く透き通っていて、聴いてるだけで辺りの(けがれ)を祓っているようだった。  手に持つ錫杖を、シャン、と鳴らす。 「私は見ての通り僧侶。酒が好きなので生臭坊主、と言うやつです」  漁師の男は言う。 「カイってのは何なんだ?」  聞かれて、ふむ、と一呼吸間を置く。 「外道へ逸れた怪物の事です。大概は怪現象、妖怪、伝承と呼ばれる概念と共鳴して生まれてきます。元は人間ですが、人を食うので退治しなくてはならないのですよ」 「法螺話だな、胡散臭い」  信じなくても結構ですよ、と僧侶。  怒りも焦りもない、ただの返事だ。  車掌の青年は言う。 「退治するって、どうやってスか? その錫杖で、エイっ、てブッ叩くとか?」 「それは最後の工程です。先ずは因果を調べて、正体を暴かなければならない」 「いんが?」 「まあ、いずれね」  ふふ、と僧侶は笑う。  冷たい笑みに、車掌の青年は気味悪さを感じる。  僧侶はおもむろに袖へと手を入れる。 「……おや?」  つまんで、出す。  それは縦横5センチ程の、真っ白い板状の何かだ。お盆のようになっており、指でこするとポロポロと崩れる。  白衣の女はそれを見て目を大きくする。  そして一言。 「これ人骨でしょ、人の頭蓋骨」  聞いた他の3人はそれをマジマジと見て、大層驚く。 「人骨!?」「コッ、コイツがカイに決まってる!」「マジかよオイッ!」  うーん、と僧侶は頭を掻く。 「私は退治する側なんですけどねぇ……」  少しの間の後、おや?、と僧侶は首を傾げ、そのガラス細工のように綺麗で無機質な瞳を、白衣の女へ向ける。 「ところであなた、どうしてコレが“人骨”だと分かったのですか?」  そうして話は彼女へと移る。
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