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本人とも他の方たちとも相談を重ね、煩雑な手続きを経て、彼は私の養子になった。
彼とはあのあとも何度か夢の話をした。
私が彼の意識に同調していたように、彼自身も夢の中で私と意識を共有した瞬間があったらしい。
不思議なことはほかにもあった。
火山の爆発によって地中に沈んだ町の夢を見ていたとき、あの老医師を町から連れ出そうとしていた若者の意識の中に彼はいたのだそうだ。
町を出た若者は人々を連れ、遠くを目指して歩き続けた。そのときの彼は自分もいずれ老医師のように人を助ける仕事をしようと胸に決意を秘めていたとのことだ。
「生まれ変わり」という言葉が頭をよぎったが、転生の存在を証明する手立てなどどこにもない。それよりもユングの集合的無意識という言葉を使って説明をした方がいい気がした。
人類は皆無意識の底で心が繋がっている。
だから同じ道を志す人の意識とシンクロしやすいし、そういったものを夢に見やすいのではないだろうか。
あとになって私は夢の中で、もう一度だけ夕焼けの国を訪れた。
瓦礫の下から次々と子どもたちが現れて路地に集まり、美しいおとぎの国に向けて出発する。
赤々と輝く雲の下、子どもたちは手をつないで歩き始める。はしゃぎながら、おしゃべりしながら、軽やかな足取りで。
黙って私はそれを見送った。
あの日あの子に手を伸ばすことがなければ、あの子もまた、この一行に加わっていたのかもしれないことを思いながら。
戦渦で命を落とした子どもたちには、悲しいことのない平和で優しい世界に生まれ変わってほしい。そう願う私の心を反映しただけの、それはただの夢に過ぎなかったのかもしれないけれども。
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