6月4日、大雨

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「とにかく、アンタみたいな臆病者には同じ臆病者がお似合いね。好きな人を近くで見るだけで満足してるような、そんな臆病者が」 「誰のことですか?」 「さぁ。自分の胸に聞いてみれば?」  スニーカーが出口に向けて歩き出す。圭はふと、先程の彼女の言葉を思い出した。  ああ、それはあそこが一番レジに近いから。  刹那、圭は目の前のが発した精一杯のサインに気付く。 「あのっ!」初めて勇気を出し、彼女を呼び止めた。 「お名前、聞かせてください!」 「……藤原皐月」 「サツキさん! 次はいつ会えますか?」 「……次の雨の日、また来るから」  スニーカーが小走りで、逃げるように去っていく。ふっと身体の力が抜け、丸椅子にドスンと腰を下ろす。  圭にはサツキさんの顔も表情も見えない。だけど彼女の声から、足音から、確かにサインを受け取った。  トクン、と胸が鳴る。 「今晩も、ちゃんとお祈りしなきゃ」  誰にともなく呟き、圭はそそくさと店仕舞いにとりかかった。
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