【3P】白き乙女

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* 「剣四郎様…」 鈴の転がるような声… だが、私は声をかけられる前に彼女の存在に気が付いていた。 それは、遠くからでもすぐにわかる彼女の芳香のためだった。 「月子…遅かったな。」 月のない夜、ほのかな星明りと外灯の中に、月子の色白の肌が妙に浮き立つ。 「……すみません…」 私は月子の白魚のような手を取り、闇の中を並んで歩く。 「今年も暑いですわね。」 「本当に暑い年だな。 先日釣りに行ったが、何も釣れなかった。 魚もこの暑さに参っているのかもしれないな。」 私達は他愛ない…悪く言えばつまらないとさえいえる会話をぽつりと交わす、 会話の合間に、時折、月子が微笑むのを見るだけで私の心はとても満たされる。 人気のない川のほとりをゆっくりと時間をかけて散策し… ただそれだけで、年に一度の月子との逢瀬は終わる。 こんなことをもう十年も続けている私は、誰から見ても愚かな男に思える筈だ。 だが、それがどうだというのだ。 私は、これで幸せなのだから、誰にどう思われようと、そんなことはどうでも構わない。
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