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鳥は、海に突き落とされた恨みを晴らすべく挑みかかったチーミンを、軽やかにかわして言った。
「吾は、リャン・ユゥジン。チーミンの担当鳥だよ。これからよろしく」
首を傾げたのはチーミンだ。
「リャン・ユゥジン? あの、織女神の侍女だっていう? 鳥なのに?」
「下界じゃでどういう風に広まってるか知らないが、吾は月廠のしもべで乾鵲でそして雄」
流暢に人語をくっちゃべる鳥が、おとぎ話の織女神を出してくる。胡散臭くない要素が一つもない。チーミンは不信感をあらわにする。
「チーミン!」
ユゥジンが突然呼ばわった。
「いいね。とてもいい。チーミンって長庚星の別名だろ、朝に夕にきわだってまぶしい星。まさにこの仕事にうってつけの名だ。明星の名とは!」
チーミンが、ただ庚の年に生まれの長子なのだと説明すると。
「そうなの? 名で選んだんだけどなあ。いかにも来るべくしてきたって感じで、運命とか使命感とか感じてもらえたらなと」
「そのー、さっきから結構、選ばれた感を出してきますね?」
「見てたよ」
「何をですー?」
「あんた、ずいぶん早くから織女神の祭壇を作ってたじゃないか。意欲とか野心とか、強く感じさせてもらったよ。適任だなって。汚穢の権化みたいな私室はどうかと思うけど」
「見たのー!?」
「人選のための必要悪だ。すべての織客は、選ばれるべくして選ばれる」
それじゃ、行こう。と、きわめて気ままに彼は話を進めた。
チーミンが苦言を呈する間もあらばこそ、仲間の乾鵲たちが続々と飛来し、チーミンの手前から、銀の宮殿の方へと一直線に整列した。
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