1章 ようこそ天上界

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(かささぎ)、河を(うずめ)て橋を()し織女を渡らしむ、ってね。君の国の祖・織女神と同じ体験をする気分はどう?」 「それより織客って何ですか?」 「雲河の近くは風が荒れてる、いつまでも橋を維持してられない、早く渡って!」 ユゥジンとそのお友達がガチャガチャ鳴いて促すので、仕方なく、チーミンは、おっかなびっくり鳥の背へ足を乗せた。 最高に、柔らかナマ気持ち悪い。 「あーんいいよねー女子のかかとに踏みつけにされるっていいよねー」 「今、ボク首ひねったらさ、裙子(スカート)の中見えるよね、下着は情熱の赤? 誘惑の黒? 選べないよ!」 「えええ袴子(ズボン)穿いてる! 反則だよこの子!」 感触も発言も気持ち悪い橋に耐えながら、チーミンは乾鵲の橋を一歩一歩、岸へ向かう。 なぜこんなことに……という、チーミンのぼやきは、途中で消し飛んだ。 橋の隙間から雲海の下が見えた。 織官が機織った布の織り目よりも、なお細密な風景の点描。目を凝らせば、点描の点の、一つ一つが世界の灯だ。 チーミンは理解し身震いした。ここは、無数の世界を俯瞰しうる場所――地上を遙かに隔たった、浮槎より上位にある世界なのだ。 冥府とは地下世界にあるものだという。ならば、ここは冥府ではない。 この無数の(せかい)を見下ろす地は――疑いなく。 「はい到着! 熱烈歓迎(ようこそ)、天上界!」 ユゥジンの無駄に明るい声が、チーミンの推測を確信に変えた。
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