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「鵲、河を塡て橋を為し織女を渡らしむ、ってね。君の国の祖・織女神と同じ体験をする気分はどう?」
「それより織客って何ですか?」
「雲河の近くは風が荒れてる、いつまでも橋を維持してられない、早く渡って!」
ユゥジンとそのお友達がガチャガチャ鳴いて促すので、仕方なく、チーミンは、おっかなびっくり鳥の背へ足を乗せた。
最高に、柔らかナマ気持ち悪い。
「あーんいいよねー女子のかかとに踏みつけにされるっていいよねー」
「今、ボク首ひねったらさ、裙子の中見えるよね、下着は情熱の赤? 誘惑の黒? 選べないよ!」
「えええ袴子穿いてる! 反則だよこの子!」
感触も発言も気持ち悪い橋に耐えながら、チーミンは乾鵲の橋を一歩一歩、岸へ向かう。
なぜこんなことに……という、チーミンのぼやきは、途中で消し飛んだ。
橋の隙間から雲海の下が見えた。
織官が機織った布の織り目よりも、なお細密な風景の点描。目を凝らせば、点描の点の、一つ一つが世界の灯だ。
チーミンは理解し身震いした。ここは、無数の世界を俯瞰しうる場所――地上を遙かに隔たった、浮槎より上位にある世界なのだ。
冥府とは地下世界にあるものだという。ならば、ここは冥府ではない。
この無数の星を見下ろす地は――疑いなく。
「はい到着! 熱烈歓迎、天上界!」
ユゥジンの無駄に明るい声が、チーミンの推測を確信に変えた。
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