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岸辺から見えた銀の宮殿は、浮槎の王宮よりなお広く、高く、端に霞がかかっている。
門上の〝月廠〟なる扁額をくぐれば、乾鵲とその鳴き声が飛び交う。室内には、行動を遮る柱が一本もない。こういう作りの空間が何を行う場所なのか、チーミンは良く知っている。だが、同時に舌禍という言葉も知っていた。しらばっくれた。
「げほげほ、羽根が雨のように落ちてくるー! なんなんですかこの鳥小屋!」
「チーミンが突然の事態に困惑し、腹を立てているのはわかる。だけど、ことは一刻を争うんだ。もう六日しかない」
「そうなんですか大変ですねー」
「チーミン、あんたの肩に、いま浮槎の命運がかかってる。世界を救うも滅ぼすも、あんた次第なんだ」
「はあー」
「わかるわかる。使命を背負うのは、並大抵の覚悟じゃない。だがチーミン、あんたはやり遂げる。吾という特別な乾鵲に選ばれた、特別な織客だから」
チーミンには、この気ままでやかましい謎の白黒鳥・ユゥジンを無視しつづける自由がある。
だが、あまり自由を行使していると、右も左もわからない天上くんだりにあっては、今後の身の振り方もおぼつかない。しかたなく、
「とりあえず、その孔雀のように派手な服脱いでくれる?」
というユゥジンの要求に、チーミンは応じることにした。
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