1章 ようこそ天上界

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そこは、極彩色の織物の山脈の連なりだった。 「廠長廠長! おわしますか!」 ユゥジンのかしましい鳴き声が、室内に反響する。 「聞えてるようるさいな」 山の端から不快そうに顔をのぞかせたのは―― 頭頂部の毛をきっちり二対八で斜めに分け、曇り一つない眼鏡をかけた、融通のきかなさそうな――ひときわデカい乾鵲だった。チーミンくらいの背丈がある。 月廠長だというデカい乾鵲(オス)は、全身からただならぬ気を発している。 「っ、なんて負の気だ! 直近一刻の間に、この世で最もダサい服でも着せられたかのかよ、このデカ鳥!」 容易に人を寄せ付けない気配というのがあるが、あんな受動的なものじゃない。これは攻める拒絶だ。一発かましてやれば万事決着だと思っていたチーミンは、早々に認識を改めることになった。このデカ鳥、全身から溢れる拒絶の気で、隙がない。 チーミンが身構える側から、廠長は一見して難のなさそうな織物を一巻き取り上げる。 ためつすがめつし、その織物の織り目がいかに歪んでいて、糸つなぎがおかしいか、制作者の人間性に踏み込んで酷評する。本人が読んだら蹲踞(三角座り)して洟をすすりながら辞表を書きそうな査定文を、官僚試験の合格者みたいな美文字で書きつけていく。 ユゥジンは、至極重要そうに解説した。 「うちの廠長、第一印象が最悪な上、すごく細かい」 「いましたよ、私の職場にも。こういう異様に細かいヤツ……」 チーミンは思い出したくない過去がわずかによぎり、やや白黒の鳥たちに同情した。
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