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ユゥジンはばさばさ、と廠長の周囲を飛び回った。
「廠長! 廠長! 報告申し上げます! 例の〈表〉に記載の、浮槎の民を連れて参りました」
「そんなの見れば判らない、ユゥジン君? 報告の時間もったいないよ業務に戻ってくれる? で、そこの浮槎の人は、ご随意に滅びたらいいんじゃないの? ほころびた失敗作には滅亡がお似合いじゃないの? ごきげんよう?」
怒濤の疑問形と皮肉で、彼が手に持った織物が腐り落ちる。恐ろしい能力だ。
「あァ? 言ったな鳥メガネ! かかってこいよ!」
チッチッと、ユゥジンは諭すように、チーミンの戦闘態勢を遮った。
「チーミンはまだ廠長の味わい方がわかってないな。廠長こそが織客を――チーミンを、月廠に招くよう、吾に言いつけたんだよ。想像して。《ボクの検品したものが完璧でないはずがない、完璧でないなら完璧に仕上げ直すべきだ》、と心に決め、チーミンを呼びつけたが、生来の内向性で事の要旨も告げられず、ただ散漫に悪態をつくことしかできずにいる、不器用な眼鏡男子を」
「チッ、今日のところは串焼きにせずにおいてやるよ……」
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