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「チーミンの世界は、そうだな……夜の織りが甘いから、最後は夜が焼け落ちて、一日中白昼の灼熱世界になって滅ぶ」
「すでに死んでいるのでよかった」
「死んでない死んでない、チーミンは」
「ユゥジンの観測によって死んでいないからといって、この私の生が真であるという保証にはならねえんだよ」
「今回の織客は特別虚無感こじらせてる!」
と、ユゥジンはまた額に手をやった。
「チーミン、よく聞いて。チーミンが機を織らないと、来たる七月七日、チーミンの大切な人々が、糸くずのようにほどけて消えてしまう」
「それもまた運命。私がこのわけのわからない場所に連れてこられ、わけのわからない宇宙観を、わけのわからない白黒鳥に教示されているように。これは壮大な詐欺なんです。やりがい搾取を強要する悪しき意志よ去れ」
深い虚無主義の沼に完全に浸かっているチーミンに、ユゥジンは憐みの表情を向けた。
「かわいそうに。いないんだな、大切だと思える者が。――よしわかった!」
ユゥジンは急にチーミンの肩を離れ、宙を一回転した。
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